研究課題/領域番号 |
23700971
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
小尻 智子 関西大学, システム理工学部, 准教授 (40362298)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 情報伝達スキル / 協調学習 / プレゼンテーションスライド / 学習支援 |
研究概要 |
本研究では発表者が用いたプレゼンテーションスライドを参加者に修正させ,それぞれの修正箇所の相違に関して議論させることをで,スライドを用いた情報伝達スキルを育成することを目的としている.当該年度は参加者がスライドの修正案を容易に作成できるようにするための「プレゼンテーション・ストーリ編集ツール」と,各修正案の修正箇所を可視化する「議論対象提示ツール」を構築した. プレゼンテーション・ストーリ編集ツールでは,発表者のパワーポイント・スライドを意味のある粒度の構成要素に分割し,それらを参加者の理解に応じて関係づけることで修正案を表現できるツールを構築した.予備実験を実施した結果から,分割する構成要素の粒度に関しては,図・表・タイトルはそれぞれの単位で,テキストエリアは箇条書きの最上位レベルで分割して扱うことが妥当ということが明らかになった.また,修正案で表現される構成要素間の関係は,複数の構成要素を意味のある単位で集約する「グループ関係」と,集約されたグループ間を順序づける「順序関係」であることがわかった.構築したプレゼンテーション・ストーリ編集ツールでは,発表者のスライドを図・表・タイトル・一定粒度のテキストに分割し,これらの構成要素にグループ関係,順序関係を付与できるようにした.一方,議論対象提示ツールでは,元となったスライドと修正案との相違点を,削除・追加・移動の3種類に分類して可視化して提示するツールを構築した. これらのツールを用いて協調学習してもらった結果,プレゼンテーション・ストーリ編集ツールでは参加者の意図を反映した修正案が容易に生成できることが明らかになった.また,議論対象提示ツールでは,グループで議論する箇所を決定するためのきっかけを提供できることがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当該年度では,予備実験から「プレゼンテーション・ストーリ編集ツール」を構築することを予定していた.この目標を達成しただけでなく,次年度の計画である「議論対象提示ツール」の基礎的な機能を構築し,その評価実験まで行うことができた.システム構築が予想よりも順調に進んだためであると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は当初の目的どおり,「議論対象提示ツール」の機能を拡張してより意味のある議論を積極的に誘導するようなシステムを構築する.当該年度では個々の修正案と元となっているスライドとの相違点を提示した.しかし,複数の参加者がそれぞれの修正案を持ち寄って議論している場合は,個々の修正案の内容よりも,グループ全体として焦点があてられている箇所,あてられていない箇所を分類して議論できることが望ましい.そこで,当該年度構築した議論対象提示ツールで抽出された個々の修正案の修正箇所の類似に基づいて修正案の特徴を分類し,議論すべき特徴を持った修正案とその議論箇所を決定して議論を誘導する機能を構築する.クラスタリングを用いて個々の修正案を分類し,各クラスタの特徴となる修正箇所を議論箇所として抽出する.また修正箇所の粒度を考慮し,議論の重複がないよう提示する議論箇所の順番を制御する機能も実現する.構築した議論対象提示ツールを用いて協調学習してもらい,I)クラスタリングされた修正案の妥当性,II)提示された議論箇所による議論の効果,III)一連の活動による情報伝達スキル獲得の効果,を評価する.
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度の成果を国内外でそれぞれ2回程度発表する予定である.また,協調学習するためのツールとして,成蹊大学の林佑樹助教の共同で開発した協調学習プラットフォームを活用する予定をしているため,実験の方法等に関して打ち合わせをする必要がある.したがって,それを含めると国外で2回,国内で4回程度の出張をする予定である.また,評価実験の様子を記録するためのビデオカメラを購入する予定である.議論は仮想環境で行うことを予定しているため,参加者の人数分の計算機が必要となる.したがって,ノートパソコンを数台購入する.評価実験では,参加してくれた被験者に謝金を支払うことも予定している.
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