研究課題/領域番号 |
23700974
|
研究機関 | 鳴門教育大学 |
研究代表者 |
井上 奈穂 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 講師 (00580747)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | 学習評価 / 授業観 / 社会系教科 / 授業実践 / 学力保障 / 授業者 / 学習者 / 方略 |
研究概要 |
本研究の目的は,授業観に対応した学習評価の方略の開発と検証を通し,社会系教科に特有の学習評価の論理を明らかにすることである。社会系教科には,多様な授業観が存在するが,それらの学習評価の方略のほとんどは知識の獲得の有無を確認するものであり,多様な社会系教科の授業観に対応したものとなっていない。授業観に対応した学習評価の方略の開発と検証は,学習評価から見た社会系教科の再検討ともなる。本研究で取り上げる授業実践及び授業計画は,社会系教科の4つの授業観(共感,理解,説明,意思決定)に基づく。 平成23年度は,社会系教科の代表的な授業観に対応する授業実践及び授業計画の収集のために,お茶の水女子大学附属小学校,鳴門教育大学附属小学校,鳴門教育大学附属中学校の研究会に参加した。また,代表的な授業実践・授業計画に関する資料の整理及び電子化を進めた。更に,「共感」「説明」「意思決定」の3つの原理に基づく社会系教科の代表的な授業実践・授業計画を分析し,学習評価のための方略を開発した。 授業観に合致した学習評価の方略とその開発過程が示されることにより,これまで,授業実践及び授業計画のレベルにとどまっていた社会系教科の授業観が学習評価の方略のレベルで具体化されたことになる。そのような学習評価の方略は,授業者が学習状況を的確に判断する上で有益な情報を与えるものであり,結果として生徒の学力保障につながるものが提示できたと言える。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は,授業実践及び授業計画に関わる資料の収集・整理及び分析を行った。収集・整理の対象となる資料は, (1)授業検討会等で配布されたもの,(2)生徒から収集したアンケート,(3) VTRやテープレコーダーによる映像/音声データである。 (1)(3)に関しては,資料の形態及び形式の統一を図るため紙媒体及びアナログ媒体の資料をデジタル化した。(2)に関しては,データの分散を防ぐために,データベースソフトでパソコンに入力し,一元化した。データ入力後のアンケ-トは,シュレッダーで裁断し,生徒のプライバシ-の保護に努めた。さらに,鳴門教育大学附属小学校,鳴門教育大学附属中学校及びお茶の水女子大学附属小学校の授業研究会等に参加し,社会系教科の授業実践及び授業実践に関わる資料の収集を行った。また,研究にご協力頂いている先生方の授業観察及び学習評価に関わるインタビュ-を実施した。 以上を通して,授業実践・授業計画及び学習評価についてのデ-タを収集・整理することができた。また,これらのデ-タを活用し,「共感」「説明」「意思決定」を原理とする3つの授業に対応する学習評価の方略及びそのツールを開発することもできた。 以上の理由により,「授業観に対応した学習評価の方略の開発と検証を通し,社会系教科に特有の学習評価の論理を明らかにすること」という本研究の目的と照合して,「おおむね順調に進展している」と評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度は,前年度に引き続いて,授業実践及び授業計画に関わる資料の収集・整理及び分析を行う。また,研究にご協力頂いている先生方の授業観察及び学習評価に関わるインタビュ-を実施し,前年度に解明された学習評価の論理の精緻化を図る。研究の手順は以下の通りである。 まず,社会系教科の4つの授業観(共感,理解,説明,意思決定)に対応した代表的な授業実践及び授業計画に関する資料をデ-タベ-ス化する。次に,平成23年度に明らかにした3つ(「共感」「説明」「意思決定」)の原理に基づく授業に対応する学習評価の方略及びそのツ-ルに加え,「理解」の原理に基づく授業の学習評価の方略及びそのツ-ルを開発する。さらに,4つの授業観に基づく学習評価の方略の妥当性を,小・中・校と学校で実践されている先生方へのインタビュ-を通して検証し,本研究で明らかにした「社会系教科に特有の学習評価の論理」の精緻化を図る。 以上の研究成果は,学会発表,論文を通して,明らかにする。
|
次年度の研究費の使用計画 |
本研究計画では,評価法及びそのツール開発と活用の論理を解明するための基礎的作業として,授業実践及び授業計画に関わる資料の分析とデ-タベ-ス化を図ること,また,小・中・高等学校で実践されている先生方へのインタビュ-や意見交換を行うことが挙げられていた。そのための費用として,以下の研究経費を計上している。 (1)学会参加費(旅費を含む),(2)ビデオカメラ購入費,(3)印刷費,(4)複写費, (5)通信費,(6)社会系教科授業実践関連図書購入費,(7)授業研究会参加のための旅費 これらの経費の内訳として,授業実践及び授業計画に関わる資料の収集,整理のために用いる(2),(6),(7)などの経費及び,研究成果の報告及び発信に用いる(1),(3),(4),(5)などの経費を計上していた。平成24年度は,本年度に購入できなかった物品などを購入する費用として使用する計画である。
|