本研究の目的は,授業観に対応した学習評価方略の開発と検証を通し,社会系教科に特有の学習評価の論理を明らかにすることである。社会系教科には,多様な授業観が存在するが,それらの学習評価方略のほとんどは知識の獲得の有無を確認するものであり,社会系教科に見られる多様な授業観に対応したものとなっていない。本研究では,社会系教科に見られる代表的な4つの授業観(共感,理解,説明,意思決定)に基づく授業実践及び授業計画を分析し,それぞれに対応した学習評価方略の開発及び検証を行う。 平成23年度は,社会系教科の代表的な授業観に対応する授業実践及び授業計画の収集のために,お茶の水女子大学附属小学校,鳴門教育大学附属小学校,鳴門教育大学附属中学校の研究会に参加した。また,代表的な授業実践・授業計画に関する資料の整理及び電子化を進めた。更に,「理解」「説明」「意思決定」の3つの原理に基づく社会系教科の代表的な授業実践・授業計画を分析し,学習評価のための方略を開発した。 平成24年度は,社会系教科の代表的な授業観に対応する授業実践及び授業計画の収集のために,愛媛大学附属中学校及び鳴門教育大学附属小学校,鳴門教育大学附属中学校の研究会,徳島県板野郡小学校社会科教育研究大会に参加し,実際の授業実践及び授業計画の収集整理及び電子化を進めた。また,高等学校の現場の教員と日本社会科教育学会へ参加し,現場の教員から見た社会系教科に対する授業観と研究者のそれとの比較を試みた。また,授業観に合致した学習評価の方略とその開発過程を明らかにした前年度の研究を継続しつつ,それに加え,平成24年度は研究者と現場の教員との授業観の比較を組み入れた。 以上を踏まえ,授業者が学習状況を的確に判断するうえで有益な情報を与えることのできる学習評価の方略の在り方について一定の意義のある提案をすることができたと言える。
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