研究課題/領域番号 |
23700976
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
永井 孝幸 熊本大学, 総合情報基盤センター, 准教授 (00341074)
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キーワード | 講義ビデオ / 顔検出 / ハイビジョン映像 / Opencast Matterhorn / 権利保護 |
研究概要 |
H24年度の研究では講義ビデオにおける人物検出・匿名化システム基盤の日常運用に向けた改良、顔検出率向上のための映像分析、オープンソースのビデオ配信システムMatterhornとの連携、タブレット用ビデオキャプチャデバイスの試作を行った。 昨年度の段階ではシステム基盤の一部に商用OSを利用していたが、システム基盤のLinuxへの移行を全面的に行うことでGPU(高速数値演算ボード)のドライバを除いて完全にフリーな実装となった。システムの全学的な利用にはサーバーを大量に用いることが必要であり、ライセンス費用の発生しないフリーな実装であることは決定的に重要である。 昨年度収録した数百講義のビデオに対して人物検出のための顔検出を行った結果、講義場面によって誤検出の割合が非常に高くなることが判明した。分析の結果、プロジェクタスクリーンや学生の衣服などが誤検出されることが多いことを確認した。これら誤検出対象の出現位置・色分布などの特徴量を求めることで、実環境で収録された映像に対する人物検出の精度が向上することが期待される。 講義ビデオにおいて配信すべきで無い範囲を指定するには、収録後の編集段階で指定する方式だけでなく収録時に指定する方式も考えられる。タブレットデバイスにビデオ信号キャプチャ用のデバイスを組み合わせることで、収録時にビデオ映像を見ながら対話的に配信範囲を指定することが可能となるが、タブレットに接続可能な映像信号入力用のデザイスが存在しない。そこで、USBカメラの開発に利用される小型のLinuxコンピュータを用い、ハイビジョン映像信号を入力とするVideo4Linux対応の汎用キャプチャデバイスの試作を行った。収録時に配信範囲を指定することによる素材加工の省力化、タブレットを用いることによる作業の簡素化が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
日常的にハイビジョン映像を収録し、ビデオの分析・加工を行うという映像分析・加工システム基盤の面についてはGPUによる処理の高速化・Linuxによる実装を達成し、一年以上の継続運用を通じて問題が無いことを確認した。 プライバシー保護のための人物検出についてはGPUによる処理の高速化を達成したものの、実環境において収録された映像では誤検出率が高いことが判明した。そのため誤検出された対象物の画像特徴量を分析し直すこととなり進捗が遅れている。 これに伴って映像編集用ユーザインタフェースの開発も遅れが生じているが、タブレットを用いた映像編集のための映像キャプチャ用デバイスを試作し、基本動作の確認を行っている。また、オープンソースのビデオ配信システムMatterhornとの連携ツールの作成を行い、ビデオ編集の基本機能についてはMatterhornを流用できるよう準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
H25年度の研究では、H24年度までに収録した映像の分析結果にもとづいて人物検出の精度を向上させると共に、H24年度に未完となった映像編集用ユーザーインターフェースの実装を行う。これにより、教育コンテンツ映像に映っている書籍・写真・図表・ビデオといった著作物を抽出し,利用許諾の確認,および,利用許諾の得られていない著作物を取り除く処理を効率よく行うための映像分析・加工システム基盤を構築する. また開発したシステム基盤の実用性を評価するため,学期の進行に合わせて講義映像の自動収録と映像の保護処理を並行して実施する.著作権・プライバシー保護の必要な素材の判別などは数名の実験協力者(大学院生など) に作業を依頼し,少人数の作業で十分な数の映像を加工できることを確認する予定である.次に権利保護処理を施した映像の視聴を学生・教員に依頼し,映像の品質・保護処理に問題がないか評価を行う. 途中で得られた成果については研究会や論文で発表を行うほか,作成したソフトウェアもオープンソースソフトウェアとして公開する予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究では,利用許諾が得られていない素材を映像から取り除くための映像編集用ユーザーインターフェースを実装し,開発したシステム基盤の実用性を評価するため,学期の進行に合わせて講義映像の自動収録と映像の保護処理を並行して実施する. 本研究で提案する著作権・プライバシー保護手法の有効性が確認できていない段階で加工済みビデオのオンライン配信を行うことは権利侵害につながる恐れがある.この問題を避けるため,加工済みビデオを被験者に直接提示するための「評価実験用PC」の費用を平成25 年度予算に計上している.これに加え,毎年蓄積されるTB(テラバイト)規模の大量の高解像度動画素材を保管するための大容量ハードディスクの費用,共同研究先との打ち合わせ旅費・成果発表旅費を計上している.
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