研究課題/領域番号 |
23700998
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研究機関 | 広島工業大学 |
研究代表者 |
松本 慎平 広島工業大学, 情報学部, 助教 (30455183)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | eラーニング / LMS / ウェブ / データベース / プッシュ型 / 電子メール / 問題配信アルゴリズム / 機械学習 |
研究概要 |
研究代表者らは,今年度の課題として,eラーニングの大規模運用時の動作を考慮したサーバ環境の整備,試作システムのサーバ環境への対応,試作システムの開発を行うための端末の整備,そして,サーバ上での試験運用とその動作の検証を主に取り組んできた.まず,年度当初においては,研究開発環境の整備を主に進めた.その結果,システム開発用の端末やネットワーク環境,動作検証用のサーバ構築を行う事ができた.次に,従来の試作システムの汎用性向上に取り組んだ.具体的には,本提案の要件定義を行い,プッシュ型eラーニングが持つべき汎用機能を具体化した.この過程で,提案システムの長短や特徴を明確にするため,MoodleによるLMS環境を導入し,その効果を検証した.その結果,プッシュ型eラーニングが持つべき機能を明確にしたばかりではなく,Moodleとのデータ連携の可能性を確認した.この成果を踏まえて,提案システムの応用対象を絞ることができた.従来,著者らは資格学習と語学学習を提案システムの対象として考えていたが,資格学習に限ってはMoodleの利用で十分であるという結論を得たこと,語学,特に英単語学習であれば,より手軽で継続的な学習が求められているということを確認できた.以上から,英語学習に限定したシステムのカスタマイズを完了させ,現在,試験的な運用実験を開始させた段階である.その他の成果は,サーバ環境への対応である.従来,試作システムはWindowsクライアント端末内で動作していたものであったが,今年度の成果により,Linux環境で動作を可能とした.従来のメールでの自動採点と成績表示の実装を達成した.メールサーバ構築とメール転送については,広告メール対策によりクライアントへの配信は容易ではなかったが,Gmailの転送機能やさくらインターネット社の仮想専用サーバの利用により,問題を克服することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度内に進めるべき課題を研究計画書内でいくつか提示していた.それぞれについて進捗を述べていく.平成23年度は,プッシュ型学習法法の教育効果を検証するための準備段階として計画されていた.具体的には,システム開発や試験運用のための機材を入手すること,システムを開発するためのソフトウェアや,動作検証するためのサーバ環境を構築することである.機材の購入や開発環境の整備については大きな問題はなく,順調に進めることができた.利用規模やシステムの拡張性を考慮しながら機材やソフトウェアを選定できた.また,複数人で開発を進めるための開発環境を整備することができた.試作システムのサーバ対応には時間を要したが,結果的に,問題の自動配信・採点が適切に行われていることを確認した.これにより,計画書で述べていた課題であるメール自動配信,配信用サーバ開発・動作環境の構築を終了させることができた.次に,プロトタイプシステム運用及び改良,コードの見直しについて述べる.ここでの主な課題は,サーバ環境で操作をさせるためのソースコードの見直しである.既存の試作システムの動作環境と異なっているため,データを移動させるだけでは多くの不具合が発生した.これらをひとつずつ取り除いていき,現在の段階では,一般的な諸機能を問題なく利用できるようにした.その他,提案構想のモデリング,機能の汎用化,基本機能の動作確認及び小規模実験を計画通り済ませることができている.平成24年度の計画にあげていた課題について,基礎的検証を行う事ができた.具体的には問題配信アルゴリズムについて検証した.平成23年度では,一般的な協調フィルタリングを適用し,学習者個々の理解度に応じた適切な問題を配信するための手法について検討し,機能実装に向けての予備実験を行う事ができた.以上より,計画通り順調に進展していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度内の取り組みにより,提案システムの基本機能の開発は達成された.平成24年度の主な課題は,外部機能と内部機能の充実と,運用実験の実施である.外部機能については,具体的には,ウェブシステムのユーザインタフェース(UI)開発である.この点については,グラフィックライブラリによる各種統計情報の視覚提示,各携帯キャリア端末対応のインターフェースの実装が必要である.利用者がより快適で使いやすいインタフェースを設計し実装するため,ウェブデザインを専門とする技術者の協力を得て,連携を密に取りながらシステムの開発を進めることを計画している.この作業は外注加工という形式で外部技術者に依頼し,研究代表者の取り組みと並行して進めていけるよう対応する.内部機能としては,データベース設計の見直しである.付加機能追加を念頭に入れて,データ構造を拡張する.付加機能としては,平成23年度開発を進めてきた教育対話支援機能との連携や,Moodle内で管理される学習コンテンツの相互利用を可能とする機能を考えている.その他,教材配信アルゴリズムの提案と実装がある.最後に運用実験の実施である.これまでに開発された基本システムを利用することで運用実験が可能となるため,実験による学習履歴データの蓄積を進める.平成24年度前半は3つの課題を同時進行で進めていき,後半においては,3つの課題の統合作業に入る.また,データが十分に蓄積された頃合いを見計らって,学習データの分析を行い,自学習慣の養成に対する効果検証を行う.何らかの傾向や,被験者からの意見を得ることができれば,平成24年度後半の課題として,新機能の追加やアルゴリズムの見直しを行っていく.なお,研究計画当初では従来の携帯電話を想定していたが,最近のスマートフォンの普及を踏まえて,スマートフォン対応の学習支援アプリケーションの開発も考えている.
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次年度の研究費の使用計画 |
間接経費を除いて170万円,そして,前年度の繰り越し費用約24万円を利用することができる.まず,設備備品費に関しては,新規機能開発及び拡張用機材として,汎用計算機端末を購入する予定である.最低限の機材は平成23年度内に入手することができたため,開発の効率を高めるためのメモリやハードディスクの増設や,ディスプレイの購入を行う予定である.関連して,計算機周辺機器やネットワーク機器を数品購入予定であり,その他,クライアントインタフェースを確認するためのタブレット端末,開発データ共有サーバ機器など購入が必要であると考えている.概算で60万程度で計画している.消耗品費やその他については30万程度で計画している.謝金については,平成23年度内の作業が平成24年度に入ってくること,平成24年度は当初からシステム開発や運用実験の補助費用が多く発生することを想定していたことから,30万程度を想定している.ユーザインタフェースの開発は外注・加工を依頼する予定であるため,その他の費用として40万程度必要になると考えている.旅費については,外注加工先との密な打合せが必要であること,平成23年度においてある程度の成果が得られており,学会への参加で成果を積極的に報告していきたいと考えていることから,安く見積もっても40万円程度必要であり,それ以上になる場合は,謝金や設備・備品費から捻出しなければならないと考えている.
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