研究課題/領域番号 |
23701006
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
齋藤 芳子 名古屋大学, 高等教育研究センター, 助教 (90344077)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 研究室教育 / 大学院教育 / 科学人類学 / 暗黙知 / 正統的周縁参加 / 大学院共通教育 |
研究概要 |
日本の理工系大学院教育においては「研究室における教育」に重点がおかれてきた。しかし、何がどのように教授学習されているのかは未解明の領域である。本研究課題では、暗黙知の移転による教授学習に焦点をあて、理工系研究室を基盤とする諸活動の観察・記録(エスノメソドロジー)と質問紙調査、聞き取り調査を組み合わせ、いかなる暗黙知がどのように移転されているのかを解明する。平成23年度は、本課題のテーマである研究室教育についての先行文献を収集し、レビューを行った。橋本・瀧田らによる大学院の各専攻を対象とする大規模質問紙調査では、工学系修士課程の「研究室における教育」が、自立した研究能力、創造力、表現能力・交渉能力を修得するのに有効で、理論と実践を架橋できるものと認識されていることが示され、また濱中は、技術者がプロフェッショナル意識を大学(院)教育において獲得していることが指摘されている。しかし、そのような教授学習が成立する場面については具体的な調査研究がいまだ乏しい。また、研究室教育と両輪をなすべく進められている大学院共通教育についての諸外国並びに国内事例の研究調査を重点的に行った。キーワードとなっているのは、参加型学習形態や、異分野融合/異質化集団を取り入れていることである。また、大学院共通教育が大学院共通教育の制度そのものにイノベーションを起こしているような事例(制度学習)もみられた。研究室活動や研究指導に関して指導教員側と大学院生側に対して行った予備的な聞き取り調査について、その結果を精査した。さらに海外の共同研究者(ヴィクトリア大学ウェリントンのキャサリン・マナトゥンガ准教授)とともに分析方法の検討や試行を行った。予備的な研究室観察ならびに指導教員や大学院生との意見交換を実施し、次年度の方策を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題のテーマである研究室教育についての先行研究調査、ならびに研究室教育と両輪をなすべく進められている大学院共通教育についての研究調査を重点的に行った。これにより、研究室教育に期待されるもの、足りないとみなされているものを把握することができた。予備的な研究室観察ならびに指導教員や大学院生との意見交換を実施し、次年度の方策を検討した。映像記録には抵抗を感じる学生もいることから、録画は限定的に使用して参与観察をメインに据えることで調整を諮り、今後の調査を軌道に乗せた。研究室活動についての指導教員側と大学院生側への聞き取り調査を行った結果について、海外の共同研究者とともに分析方法の検討や試行を行った。以上のとおり、研究計画をもとに柔軟に調査研究を進めており、次年度以降の道筋をつけられたものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
参与観察を中心にすえ、本格的にエスノメソドロジーに取り組む。研究室における特徴的な言語(専門用語、擬音語・擬態語、教員の口癖・モットー、学生間の隠語、など)や振舞(対装置、対文献、対人間、対発表、対学会、対予算、など)を抽出し、研究室内に流布している研究ポリシーなどを参考に、言語や振舞の背景にある価値観や規範、思考方法などの探索を行う。さらに以下のような点を観察を通じて明らかにしていく。(1)誰の影響か?〔教員、指導学生、先輩、同輩、他研究室の者、など〕 (2)どのような場面か?〔進捗報告会、輪講、実験、データ解析、食事、行事、など〕 (3)契機はなにか?〔なんとなく真似る、注意・忠告・マニュアル、意義を理解して、など〕 (4)時期はいつか?〔研究室加入からの時間経過〕 (5)修得に至るまでの経緯はどのようなものか?
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次年度の研究費の使用計画 |
参与観察のメモや録音/録画、ならびに指導教員側と大学院生側の聞き取り調査で得られたデータ整理のため、アシスタントの雇用や外注(テープ起こし等)をおこなう。360°撮影ビデオカメラキットを購入し、実験室内に設置して人の動きのデータを取得したうえで、その分析を試みる。科学系の国際大会に参加し、海外の研究室教育、大学院教育の状況について、できるだけ広く情報を収集する。国内の高等教育ならびに科学論関係の学会に参加し、関連情報の収集や関係者との意見交換を行う。
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