研究課題/領域番号 |
23701009
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
北島 雄一郎 日本大学, 生産工学部, 助教 (40582466)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | ボーア / アインシュタイン / 実在 |
研究概要 |
本研究課題の一つとして、量子力学が形成された時期において議論された因果に関わる概念的問題を現代的観点から明晰化するという課題がある。特に本年度は、量子力学が形成されるにあたって、大きな役割を果たしたアインシュタインとボーアによる議論に注目した。 ボーアは量子力学では従来の古典的概念を放棄する必要があるということを強調する。例えば、アインシュタインは、ポドルスキーとローゼンとの共著論文において、ある時空領域における観測は空間的に離れた時空領域にある対象の実在に影響を及ぼさないと考えた。これに対して、ボーアは1935年の論文において、観測が空間的に離れた系に『力学的な擾乱』を与えることがないということを認めるものの、『その系の将来の振る舞いに関していかなるタイプの予言が可能なのかを定める諸条件そのものに対する影響』を及ぼすと述べた。 しかし、このボーアの反論もまた曖昧であり、謎めいている。ハルヴォーソンとクリフトンという科学哲学者は、ボーアが考えたこの空間的に離れた系に対する影響がどのようなものであるかについて、ボーアによる古典的記述という考え方とボーアによる客観性という考え方に注目して考察している。彼らは、ボーアによる古典的記述と客観性という考え方をあらわす数学的な条件を提案し、ボーアによるアインシュタインに対する反論が、それらの条件と整合的であるということを示した。 本研究では、アインシュタイン・ポドルスキー・ローゼンが考察した状態が代数的場の量子論においても存在することを示した。つまり、代数的場の量子論においてもアインシュタインとボーアの議論は同じように成り立つ。そして、ハルヴォーソン・クリフトンの結果を拡張して、ボーアによるアインシュタインに対する反論が、それらの条件と整合的であるということを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で述べた結果は、名古屋大学の小澤正直教授との共同研究の正解であり、すでに`Reconstructing Bohr's reply to EPR in Algebraic Quantum Theory’と題した共著論文が、Foundations of Physicsにすでに掲載されている。また、この論文をまとめたことにより、今後取り組むべき課題も明確になった。そのため、現在本研究課題はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
研究実績の概要で述べたように、今年度はアインシュタイン・ポドルスキー・ローゼンの議論に対するボーアの反論、特に観測が空間的に離れた系に『力学的な擾乱』を与えることはないものの『その系の将来の振る舞いに関していかなるタイプの予言が可能なのかを定める諸条件そのものに対する影響』を及ぼすという箇所に注目し、この箇所はボーアによる古典的概念と客観性という考え方と整合的であるということを示した。しかし、これらの考え方とボーアの反論が同じ事であるかどうかは明らかではない。今後は、この点の考察を進めたい。 また、アインシュタイン・ポドルスキー・ローゼンが考察した状態に関連する因果に関わる問題として、ベルの不等式の破れがあげられる。ベルの不等式は、ある時空領域における観測が空間的に離れた他の時空領域の観測結果に影響を及ぼさないという条件などから導かれる不等式であり、量子力学ではこの不等式が破れているということが知られている。今後は、ベルの不等式の破れと因果の関係も考察していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度も本年度同様のスタイルで研究を進めていく。つまり、普段は論文、書籍を読み自分の考えをまとめ、研究会、学会等でそのアイデアを発表し、他の研究者との議論を通じて、そのアイデアを洗練させていくというスタイルである。したがって、次年度も研究費は主に書籍と研究会に参加するための旅費として使用する予定である。
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