研究課題
研究目的である光ルミネッセンス(OSL)年代の放射性炭素(C-14)年代との相互比較に到達するために、研究初年度はOSL特性の実験的観察を行った。 まず、本科研費で導入した人工太陽システムを用いて、石英鉱物のOSL信号のセロリセット(タイムゼロイング:信号の初期化)を検証した。Co-60γ線を30 Gy照射した試料を約60 kℓxに設定した人工太陽の下で0秒(露光なし)、1秒、10秒、60秒、600秒、10800秒、28800秒間露光しOSL測定を行った。その結果、10秒後にはOSL強度は約8%まで急激に減少した。600秒では約4%まで減少することがわかった。次に、単試料(SAR)法OSL測定の測定プロトコルを改良した。従来、放射線照射後のOSL測定と感度補正用のテストドーズ測定の繰り返し測定であったが、その場合thermal transferによるrecuperation現象が起こる可能性があることが指摘されていた。そこで、テストドーズ測定後にホットブリーチの工程を新たに追加した測定プロトコルを作成した。そして、OSL装置にインストールして動作確認を行い、測定プロトコルが正しく動作していることを確認した。また、マレーシアの初期製鉄遺構にかかわるレンガ試料を用いてOSL年代測定を実施し、レンガ試料のTL年代と比較することで、その有効性を確認した。 OSL年代とC-14年代比較のための試料としては、山形県丸森1遺跡において遺跡堆積物を採取し、現在試料処理が完了している。次年度、改良したOSLプロトコルを用いてデータを蓄積し、C-14データと比較を行っていく予定である。そのほか、複数の地点において、試料採取を行い、順次試料処理および測定を行っている。 成果の主な公表としては、OSL年代とC-14年代を比較した従来データを整理し、地形発達との関連も加味して報告した。
2: おおむね順調に進展している
研究目的は光ルミネッセンス(OSL)年代の放射性炭素年代との相互比較である。2年計画の初年度として、交付申請書で立案した計画どおり、研究は進展している。具体的には、OSL特性の検証や測定条件の再設定を行った。特に、OSL測定プログラムの改良は、OSL年代の確度検証に必要であり、初年度に動作確認まで終了したのは、2年目に向けてとても意義あることである。採取した試料の前処理もほぼ完了しており、2年目に計画していたOSL測定によるデーや蓄積と相互比較に向けて計画はおおむね順調である。
2年目は、試料処理が完了した試料について測定条件を順次決定して、単試料(SAR)法によるOSL測定を行っていく。また、C-14測定が行えそうな試料を逐次採取していくことで、より相互比較できる機会を増やす。
高確度なOSL測定条件を用いて測定を行い、C-14年代と相互比較を実施する。1. 中国泥河湾の旧石器遺跡で採取した試料の高確度OSL年代測定山形県丸森1遺跡ほか、採取した遺跡堆積物について単試料(SAR)法を用いたOSL年代測定を実施する。2. 得られたOSL年代とC-14年代を相互比較する。さらに、TL年代を含めた様々な年代データとも比較を試みる。また、古環境復原モデルと照合させた上で、OSL測定法の確度向上についてその有効性を確認する。
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平成23年度山陰海岸ジオパーク学術研究奨励事業報告
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