研究概要 |
本研究では,縄文時代の遺跡から出土した石器や土器の付着物に含まれる残存デンプン粒を分析することによって,縄文時代の植物利用の実態を明らかにすることである。具体的には,植物の加工具とされる石皿や磨石類,植物を煮炊きした痕跡である土器着植物遺体について残存デンプン粒の検出を試み,石器や土器の加工対象となった植物を検討する。さらに,残存デンプン粒の由来する植物の種類を解明するだけでなく,デンプン粒から特定された植物の種類別に,石器や土器の器種,あるいは付着部位と対比することで,これらを用いた植物の加工・利用方法を復元することを主要な目的とした。 平成25年度は最終年度となるため,前半期と後半期に分けて研究を遂行した。24年度までに鹿児島県水迫遺跡と東京都下宅部遺跡の調査研究が完了したため,25年度前半は比較研究とする神奈川県大日野原遺跡と北海道北黄金貝塚の分析調査を主体的に行う。現生デンプン粒標本の作製も残存デンプン粒の植物同定で必要となるため同時に進め,残存デンプン粒の植物種の検討を行った。後半期は研究成果を統括した。 これまでの研究成果は,第78回アメリカ考古学会(SAA 78th Annual Meeting Honolulu, Hawaii),国際古民族植物学会議第16回大会(16th Conference of the International Workgroup for Palaeoethnobotany),日本文化財科学会第30回大会・総会,第20回インド・太平洋先史学会(The 20th Congress of the Indo-Pacific Prehistory Association (IPPA))で報告した。
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