本研究では,縄文時代の遺跡から出土した石皿や磨石類,土器付着植物遺体の残存デンプン粒分析を行い,残存デンプン粒の検出,残存デンプン粒の遺存状態の検討,現生デンプン粒標本を用いた残存デンプン粒の植物同定,を体系的に実施した。研究の結果,石器や土器の付着物から検出された残存デンプン粒から,高い頻度で加工された野生植物の手がかりが得られるとともに,「どのように」加工・調理されたのか実証できることが判明した。さらに,現生標本の検討からは,デンプン粒の外形や粒径,偏光十字の形状など形態学的な特徴にもとづけば,属レベルまでの同定が比較的容易であることも提示することができた。
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