研究課題
日本列島の後期更新世人類遺跡から出土した微小骨片の種同定を可能とすべく、更新世動物群の骨組織構造を比較形態学的に検討し、骨組織形態学的分析の種同定法への応用を試みた。まず、日本列島の後期更新世に生息していた代表的な中大型乳類群(イノシシ、ニホンジカ、ニホンムカシジカ、ヤベオオツノジカ、カモシカ、バイソン、ウシ、ゾウ、ヒグマ、イヌ、キツネ、タヌキ、テン、ウサギ、ヒト)の四肢長骨緻密質を採取して組織切片を作成し、ハバース系および葉状骨の所見記載、オステオンとハバース管の面積計測、および骨皮質の厚さの計測を行った。組織形態計測値を統計的に検討した結果、長径が5mm以上、できれば1cm以上残存する哺乳類の四肢骨幹部であれば、(1)シカやイノシシなどの中型偶蹄類、(2)ヤベオオツノジカやバイソンなどの大型偶蹄類、(3)イヌやテンなどの小中型食肉類、(4)ヒグマに代表される大型食肉類、(5)ウサギ、(6)ヒトの各動物群を、ある程度まで識別できることを明らかにした。この方法を用いて北海道柏台1遺跡から出土した旧石器時代の焼骨片の組織形態を解析し、生物地理学的知見も併せて検討した結果、それらが中型シカ科に相当する可能性が高いとする結論を得た。さらに青森県尻労安部洞窟から出土した旧石器時代の微小骨片についても研究を進めており、近々結果を報告する予定である。本研究の成果は、旧石器時代における動物資源の利用様相の実証的な解明に貢献するものである。
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