研究概要 |
<最終年度の成果> 前年開発したDNAマーカーのうち,1:核ゲノムマーカーによる現生メロンの分類,2:葉緑体ゲノムマーカーを種子遺存体へ適用した. 1では8つのDNAマーカーを用いて現生メロン251系統を系統解析した.この結果は,現生メロンが大きく2つに分けられること,葉緑体ゲノムマーカーによる分類の結果と対応していることを示していた.開発した核ゲノムマーカーは次年度に種子遺存体の分析へ適用する.2では鹿田遺跡より出土した近世のメロン種子の80粒を分析した.この結果,DNAを増幅できた29粒 (36.3 %)の種子遺存体は1種類の細胞質型で構成されていた.11世紀以前のメロン種子遺存体は,2種類の細胞質型が認められたことから,遺跡周辺においてメロンは選抜を受けたと考えられた.本結果は日本文化財科学会第30回大会 (青森県)にて発表のために登録済みである. なお,成果の一部は,第5回東アジア考古学協会世界大会 (福岡県, 6月)にて公開するとともに,論文としてBreeding Science誌において受理 (2月)された. <期間全体の成果概要> 研究では種子遺存体に適用できる葉緑体ゲノムと核ゲノムのDNAマーカーを開発した.これらのマーカーが開発段階で世界各地の現生メロンを系統解析しているので,それらの適用範囲は世界各地の種子遺存体に利用できるほど幅広い.また,現生メロンの分類結果は育種に利用することで,育種素材の評価に利用される栽培面積の縮小につながる.従って,研究の意義は,本DNAマーカーが考古学のみならず育種学へも適用できることにある.開発したDNAマーカーによって,日本のメロンの導入と選抜が歴史にそって示唆された.この事実は世界で初めてであると同時に,イネなどの他の作物や土器などの人工遺物の日本での変遷と対応する可能性があり,他の研究分野へ貢献すると期待される.
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