本研究は文化財公開施設等における汎用的な高精度微生物汚染評価システムの構築を目指すものである。最終年度である平成25年度においては、前年度までに得られた成果をふまえ、1)本研究で開発された微生物汚染評価法と従来法との検出感度、操作性、およびコスト面での比較を行うとともに、2)環境調査と統合した微生物汚染評価システムの有効性について検証した。また、本研究全般を取りまとめる形で、得られた結果を文化財関連の論文および学術会議において発表した。当該年度の成果としては、開発された微生物汚染評価法が従来法と比較し、高い検出感度を有すること、操作性に優れている(簡便な)こと、運用コストの上昇がないことが明らかとなった。さらに実際の文化財公開施設において、データロガーを使用した温湿度モニタリングと開発された微生物汚染評価法によって収集されるデータを総合的に解釈した結果、施設における最適な微生物モニター頻度および微生物モニターポイント数を明らかにすることができた。 研究期間全体を通じて実施した研究の成果として開発された微生物汚染評価法は以下の特徴を有する。1)大がかりで高額な設備をほとんど必要とせず、微生物汚染を高精度かつ迅速に把握することができる。2)従来の微生物汚染評価法や主流の遺伝子分析法と比較し、準備・分析に要する労力が少なく、操作が比較的簡便なため、専門的な知識を有しない文化財公開施設等の職員でも信頼性の高い微生物汚染評価を自前で行うことができる。3)比較的低コストで運用できる評価システムであるため、小規模な文化財公開施設などにも導入しやすい。 したがって本研究成果は、技術・コスト面からの障壁を取り除くことで、今後の文化財公開施設における微生物汚染対策への動きを推進するものであり、IPM体制のさらなる普及・充実をはかっていく上で大きな意義を有している。
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