研究課題/領域番号 |
23701018
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研究機関 | 山梨県立博物館 |
研究代表者 |
植月 学 山梨県立博物館, その他部局等, その他 (00308149)
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キーワード | 馬産 / 在来馬 / 動物考古学 / 楕円フーリエ解析 |
研究概要 |
本研究では、わが国において各時代にどのような系統の馬が飼育され、それが生産管理や流通とどのように関わっていたのかについて、遺跡出土馬歯の輪郭形状解析により解明することを目的としている。昨年度の調査により本方法の有効性が確認できたため、今年度はより広範な地域、年代の出土標本データの収集を重点的におこなった。 遺跡出土馬歯の調査は青森県、群馬県、長野県、神奈川県の古代~中世遺跡出土標本についておこなった。国外では韓国の古代遺跡より出土した馬歯の調査をおこなった。また、研究協力者より近畿地方の古代遺跡や韓国の古代遺跡の標本データの提供を得た。以上をこれまでに収集した東日本の標本と比較した。 その結果、古代においては東北地方と中部地方の馬歯形状の差が小さいのに対し、中世になると東北、関東、中部地方それぞれの地域性がより明確になることがあきらかになった。以上は古代以降に発展する東北地方北部の馬産が北方経由でもたらされたとの説には合致せず、むしろ中部地方を含む古代日本由来との説により調和的である。 韓国古代遺跡との比較では、韓国内の対象遺跡・標本が比較的少数であるにもかかわらず、日本国内に比べて形状の多様性が大きいことが確認された。その中には日本国内では見られない形状と、日本の古墳時代や古代遺跡出土標本に近い形状の標本の両者が見られた。以上は日本にもたらされた古代以前の馬がごく限られた系統のものであった可能性や、韓国内の特定の地域に由来する可能性を示唆するが、少数の標本による結果であり、より詳細な検討を要する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた遺跡出土馬歯データの蓄積はある程度達成でき、これまでに約40遺跡、1300点の馬歯画像を収集することができた。また、韓国との比較も進めることができた。しかし、国内でも西日本のデータが少なく、大陸との比較や国内への馬産の普及過程の解明を進めるにはいまだ十分とは言えない。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により、日本列島にもたらされた古代馬がどの程度限られた系統であったか、あるいはどのような地域に由来するかを明らかにできる見通しが立った。今後はモンゴルや中国など日本古代馬の故地と推測される大陸のより広い範囲で馬歯の形状変異を確認することによって、日本古代馬との関係を検討していく。また、大陸と東日本の間に位置し、経由地と推定される西日本のデータも収集していく必要がある。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は国外や西日本の標本を調査するため、旅費の割合が多くなる。ただし、予算が限られているため、可能な場合には研究協力者などを通じて画像や計測値を入手し、より効率的にデータを収集していく予定である。最終年度であるため、報告書の刊行とインターネット上での成果の公開にも研究費を充てる。
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