研究課題/領域番号 |
23701022
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
清水 則雄 広島大学, 総合博物館, 助教 (70437614)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 準絶滅危惧 / トビハゼ / 干潟 / 分布 |
研究概要 |
本研究の目的は,新たに生息を確認した絶滅危惧種トビハゼの分布・生息密度調査から,トビハゼの保全に向けた基礎調査を緊急的に行いその保全策を打ち出すことである。 本研究では絶滅危惧種トビハゼの広島県沿岸部における生息場所を2000年以来11年ぶりに確認できた。唯一の生息環境と考えられた福山市松永湾以外にも、生息地を新たに確認したため、広島県下有数の干潟9地点(県西部2か所、中部4か所、東部3か所)における本種の生息確認調査を実施した。その結果、備後灘に面する県東部では生息数の際立った干潟が存在していたが,広島湾に面する県西部では生息が確認できなかった。両水域をつなぐ安芸灘に面する中部域では,ほとんどの調査地点で幼魚のみの確認にとどまり,再生産に関与する成魚の存在はみとめられなかった。広島県内の代表的干潟におけるトビハゼの生息が県東部に集中し、中部海域の本種の過去の生息場所を中心として本種の生息状況が危機的状況にあることを具体的に明らかにできた。本種の保全を考える上で非常に意義深い結果となった。 しかしながら、当初予定した松永湾の個体群における繁殖行動を中心とした詳細な生態調査は思うように実施できなかった。この理由として、本種の繁殖シーズンが6月-7月末と考えられているが、本年度は本期間が天候不順が多く調査日においても本種の活性が非常に低かったこと。震災の影響で予算配分が不透明であったため、調査開始が遅れたことなどがあげられる。本種が再生産を行っているかが解明されなければ、本種の保全を議論することはできない。本年度は、昨年度に生息を確認した干潟における詳細な生態調査を実施する予定である。 これらの成果を、予定通り講演会や野外観察会、公開企画展等の形で広く地域に発信し、本種の保全に向けた環境教育プログラムを実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究により、絶滅危惧種トビハゼの広島県沿岸部における生息場所を2000年以来11年ぶりに確認できたこと。広島県内の代表的干潟におけるトビハゼの生息が県東部に集中し、中部海域の本種の過去の生息場所を含み本種の生息状況が危機的状況にあることを具体的に明らかにできたことは非常に意義深い。 本結果は、魚類生態研究会での発表、論文での公表を行い、地元のマスコミにも大きく取り上げられるなど、一定の反響を呼び、当初の計画以上に進捗しているといえる。 しかしながら、当初予定した松永湾の個体群における繁殖行動を中心とした詳細な生態調査は上述の理由により思うように実施できなかった。本種が再生産を行っているかが解明されなければ、本種の保全を議論することはできない。 本年度は、昨年度に生息を確認した干潟における詳細な生態調査を実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本種が再生産を行っているかを解明されなければ、本種の保全を議論することはできない。本年度は、昨年度に生息を確認した干潟における詳細な生態調査を実施する予定である。また、本種が生息している干潟と未生息の干潟の比較から、本種の生息条件を解明する調査もあわせて実施したいと考えている。 これらの成果を、予定通り講演会や野外観察会、公開企画展等の形で広く地域に発信し、本種の保全に向けた環境教育プログラムを実施する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度の調査開始が遅れたため(震災の影響により、予算確定が順延)、繁殖期盛期の調査が、十分には実施できなかった。その予算分が、本年度に繰り越されたため、本年度の6、7月に本種の再生産を明らかにする生態調査を実施する。具体的には、現地調査補助者への謝金、調査器具等の物品費を計上している。 また、昨年度の成果とこれらの成果を合わせて地域での公開展示を実施し、野外観察会、講演会等と合わせた環境教育プログラムを実施する。このためのパネル等の物品費、講演講師謝金、広報宣伝費、会場設営・保守管理謝金等に使用を予定している。
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