研究課題/領域番号 |
23701025
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研究機関 | 大阪市立自然史博物館 |
研究代表者 |
石田 惣 大阪市立自然史博物館, その他部局等, 研究員 (50435880)
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キーワード | 市民参加型調査 / 博物館連携 / 干潟 / 標本記録 / 底生生物相 / レッドリスト / 国際情報交換 / イギリス |
研究概要 |
(1)1950年代以前に国内で採集された干潟棲貝類標本の探索及びデータベース化:京都大学総合研究博物館、ロンドン自然史博物館(チャレンジャー号航海コレクション)が所蔵する動物標本から、主に1950年代以前に日本国内で採集された干潟棲無脊椎動物の標本記録の調査を行った。平成24年度までの調査結果と併せて、主に東京湾、三河湾、大阪湾、瀬戸内海などを中心とする海域で絶滅もしくは著しく減少した種について採集地・採集時期をデータベース化し、高度経済成長期以前の都市域の内湾干潟の貝類相の再構築を試みた。 (2)瀬戸内海沿岸各地の干潟における比較生物相調査:瀬戸内海で良好な干潟環境が残っている兵庫県播磨灘、岡山県水島灘沿岸干潟等で地形環境及び生物相の調査を行い、現在の大阪湾の生物相や地形環境との比較を行った。それを踏まえて、平成24年度に行った推論(ヨシ帯や干潟の一定面積の残存が生物相の維持に必要)の検討を進めた。 (3)国内の干潟における過去~現在の生物相構築と保全への活用:平成24年度に引き続き、主に大阪湾(大阪府域)について、明治期から現在までの生物相調査報告、生物出現記録、その他文献・標本記録を渉猟し、大阪湾域でのファウナ ・フロラリストを(総数約580種)を完成させた。これらから岩礁性種、潮下帯種、未同定種を除いた約280種について個体群存続に関わるリスク評価を行い、大阪府レッドリスト改訂版策定のための参考資料とした。 (4)研究成果の社会還元:本研究の成果として得られた大阪湾の沿岸環境の変遷について、平成25年夏に大阪市立自然史博物館で開催した特別展の展示として紹介するとともに、展示解説書の執筆も行い、市民への成果還元を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度に計画していた「干潟の生物相調査」及び「高度経済成長期を境として消失または増加した干潟性生物の抽出と要因解析」については、大阪府域での記録種について当年度にまとまった検討を行った。また、これらの解析結果は大阪府レッドリスト改訂版の策定にも活用した。このことから、平成25年度までの計画は大阪湾をモデルとして概ね順調に達成できたと考えている。「『干潟の要注目種』の選定と、市民参加型干潟環境調査のためのモデルプロトコルの策定」については平成25年度中に完了できなかったが、平成26年度当初段階ですでにその作業を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
研究の最終年度として、「『干潟の要注目種』の選定と、市民参加型干潟環境調査のためのモデルプロトコルの策定」を今年度に行う。当初計画では試行調査を行うことになっているが、これについては大阪湾環境再生連絡会が主宰する「第7回大阪湾生き物一斉調査」の一環として行う。この試行を踏まえて、問題点や課題の抽出を行うこととする。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究分担者となっている別の研究課題と使用する物品(古地図、海図、その他文献等)を共用できたことから、主として物品費が当初使用予定よりも少額で済んだことによる。 解析やデータベース構築作業に必要なコンピューターを更新する必要が生じていることから、昨年度からの余剰額についてはこの購入に充てることを検討している。旅費については主に学会発表等に充てる。人件費・謝金については、文献情報及び標本情報のデータベース化作業等を行うアルバイト人件費に充てる。その他経費については文献複写費等に充てる。
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