研究課題/領域番号 |
23701029
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
金 幸隆 東京大学, 地震研究所, 研究員 (60378552)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | Tectonic Geomorphlogy / Type of Crustal Movement / Active Folding / Active Faulting / Seismical Movement / Non Seismical Movement / Paleoseismology / Earthquake Cycle |
研究概要 |
活褶曲帯における傾動量を定量的に導くために,2004年新潟県中越地震の震源域における新第三系・第四系の地質データ(約1500地点)の走向傾斜を数値化した.また高密度デジタル標高データの使用許可が得られ,そのファイル形式を整備した.現在,空中写真判読による地形分類をGISで作成している.これらが完成すれば,傾斜変動量の時空間変化が検討され,中越地震の地殻変動量データとの比較や断層モデルの構築に研究を発展できる可能性がある.また我々は,中越地域を走る主要活断層の一つである六日町断層の活動時期に関する論文を学会誌に投稿した. 活褶曲帯では小規模~大規模の地震が頻発し,死者を伴う災害が起きている.しかしながら地震サイクルと地殻変動の関係についての議論は一般に不足しており,活褶曲帯における地震発生の予測方法は構築されていない.2004年新潟県中越地震(Mw6.6)は,日本で最初に認定された活褶曲帯で発生した.震源域の活褶曲帯では,活断層の存在が指摘されていたが,第四紀活褶曲の測地学的変位速度(過去数十年程度)と地質学的変位速度(過去数十万年間)が同程度あることから,中越地震の震源域では非地震性変動が卓越し,中規模~大規模な地震は起こらない可能性が指摘されていた.このように中越地域は典型的な活褶曲帯の一つとして認識されながら,地震と地殻変動の関係(地震性変動と非地震性変動の関係)は十分に理解されていない. 活褶曲帯の長期予測方法を高度化するために,地殻変動の様式を分類する必要があり,そのために本研究では地殻変動量を詳細に解明する.中越地域の従来の研究では,地殻変動量に関する地形学・地質学調査から主に上下地殻変動量が推定されてきた.我々は広範囲の傾動量を定量的に導く研究を行い,同地域における地殻変動量の導出方法・精度の向上を図る.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年度(初年度)は,以下の作業を実施した.(1) 活褶曲帯における傾斜変動量を定量的に導くために,2004年新潟県中越地震の震源域の新第三系・第四系の地質データ(約1500地点)から走向傾斜を数値化した.(2) 高密度デジタル標高データのファイル形式を整備した.(3) 現在,空中写真判読による地形分類をGISで作成しているところである. ※上述した作業は想定以上に時間を要するが,平成23年度までに(1)と(2)の作業が完了し,地質データと標高データを地理情報システム上に精密にプロットされた.傾斜変動量の分布を解明するためには,(3)の作業を終了した後に(4)定量的な地形解析が要せられる.(4)の解析を始めるのが,平成24年度の秋口~冬口になる.
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今後の研究の推進方策 |
活褶曲帯における大地震の発生様式および発生時期の長期予測方法を高度化させるために,研究を三段階の課題1「地形解析」,2「古地震履歴の解明」,3「地殻変動様式の分類」に分けて課題申請をしている.本研究はその第一ステップの課題1「(23701029)傾動量の定量化に基づいた2004年新潟県中越地震の震源域・活褶曲運動の解析」を平成23年度・平成24年度の二年間で行う.この研究内容に変更なく,研究を推進する. 研究作業の中では,課題申請書に記載した通り,地形の成因に関する解析・検討を多角的に行う必要がある.傾斜変動量の分布を解明するためには,前述した(3)の作業を終了した後に(4)の地形解析・検討を始めるのが,その開始が平成24年度の秋口~冬口になるとしたら,当初予定の海外学術大会および海外研究者との議論は翌年度(平成25年度)になる可能性がある.我々(私)は,本研究を今後の地震予知研究・変動地形研究の進展に関係する重要な課題であると思われるため,(4)の地形解析は丁寧に議論を行うべきと判断する.なお平成24年度に国内学会発表と平成25年度に論文作成・投稿については、当初の予定通りに推進する予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費の使用内訳の項目は,課題申請書に当初予定を記載した通りである.1. 旅費は,新潟県中越地方を訪問し,地形の確認と地質調査を行う.レンタカーを借り上げる予定である.また日本地理学会(神戸大会)など,国内の学会に参加する予定である.2. 物品は,地形図および活断層図,GIS解析ツールを購入する予定である.3. GISデータ化および地質分析に研究費を使用する.また英語論文の校閲費および投稿掲載費,海外学術大会の出席・議論は翌年度に行うことを視野にいれる.
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