本研究では,観光地内各所に対する旅行者の関心強度を可視化した「観光ポテンシャルマップ」を開発した.このマップは,旅行者にとっては見所の分布が示された明快な観光情報となり,観光地側にとっては観光地空間の整備や観光客の誘導を検討するうえで有用な資料となるものである. 初年度は,旅行客の関心強度の測定法として考えられる5手法を比較検討し,彼らの写真撮影頻度分布を利用する手法が最も優れることを示した,さらに,オンライン写真共有サイト上に蓄積された位置情報付き写真を活用することで,きわめて低コストに観光ポテンシャルマップを作成できることを示した.また,観光ポテンシャルマップを利用した簡易なスマートフォン向け観光案内ツールを作成し,モニター実験によりその有用性を確認した. 最終年度においては,まず観光ポテンシャルマップの精度評価を行った.この結果,データ源として用いたオンライン写真群は,現地居住者による写真を取り除くフィルタを適用していたにも関わらず,自宅らしき場所で撮影されたプライベート写真やテレビ画面を映した写真など,観光ポテンシャルを評価するうえで不適切な写真が1割程度含まれることが判明した.そこで,写真に付加された様々な属性データ(Exifデータ及び写真共有サイト上のメタデータ)を利用し,不適切な写真を自動除外するための手法を開発した.そしてこれを適用することで,観光ポテンシャルマップの信頼性が向上することを確認した. 本研究では任意の旅行写真をベースに観光ポテンシャルマップを作成したが,今後は写真に付加されたタグを利用し,適切なフィルタリングを施すことで,テーマ別の観光ポテンシャルマップを作成することも可能になるだろう.本研究の主たる成果は,既にネット上に膨大に蓄積された写真データを活用することで,従来にない有用な観光情報を生み出せる可能性を示せたことである.
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