研究課題/領域番号 |
23701031
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研究機関 | 駒澤大学 |
研究代表者 |
田中 靖 駒澤大学, 文学部, 教授 (80348888)
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キーワード | LEMs / DEM / GTL / シミュレーション / 海水準変動 / 拡散係数 / 地形計測 |
研究概要 |
本研究は,航空機レーザー測量DEM(LiDAR-DEM)を初期条件として用いることができる地形シミュレーションモデルの構築と,構築したモデルのインターネット上への公開を目的として行っている。事業2年目となる平成24年度は,これまで積み上げてきた中解像度(10m程度)のデータにシミュレーションモデルの構築の仕上げと,それをLiDAR-DEMへ適用する際に生じる問題の発見に関する研究を行い,その成果の一部は地球惑星科学連合2012年大会と日本地理学会2013年春季大会で発表したほか,雑誌『地形』へ投稿し,すでに受理されている(印刷中)。 構築しているシミュレーションモデルでは,これまでの地形学的な研究成果をベースにして,初期条件とする地形データの解像度と目標とする予測期間のバランスを考慮しながら,地殻変動による垂直変位,河川侵食,斜面における土砂移動,波浪に伴う海食について,一年単位で計算することにより地形変化を再現している。また,海面変動のデータも境界条件として与えることが出来るようになっている。このように,総合的な視点から地形変化を再現・予測できるような地形シミュレーションモデルを用いて,現実の地形について研究した例は国際的に見ても多くはない。 公表した研究成果では,福島県楢葉町周辺の東西78km,南北19kmの範囲を対象として第四紀後期における氷期-間氷期サイクルの約2周期程度の期間に相当する21.5万年の地形変化の再現を行った。その結果,このモデルが隆起に伴って離水・形成される海成段丘など,理論的に予測される地形変化をおおよそ再現できていることを示すことができた。また,各種パラメータの違いに伴って生じる地形の違いや,地形形成過程に関して,これまでとは異なる視点から考察することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
10m程度の解像度のDEMによるシミュレーションモデルの構築については,概ね順調に研究が進展し,学会発表や査読付論文の受理という形まで持ってくることができた。一方で,初期条件に航空機レーザー測量データを用いたシミュレーションモデルの構築については,データの高解像度化に伴う様々な問題に直面しており,前年度に比べれば若干の進展はあったものの現在その解決のための方法を探っている状況にある。 その他,シミュレーションに用いる各種係数の地形学的検討や,試験候補地の調査などについても,10m解像度レベルでの検討ではその理解が深まり,その成果は公表論文の中に反映することができたが,航空機レーザー測量データへの適用の視点からの考察はあまり進んでいない。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は,特にLiDAR-DEMを初期条件に用いるシミュレーションモデルの構築に集中して研究を進める。25年度中にモデルのプロトタイプを完成させることを目標とする。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費(解析に必要なソフトウェアの維持更新,コンピュータ関係消耗品):20万円 旅費(入力パラメータ検討のための現地調査,研究会参加):10万円 人件費・謝金(研究アルバイト料支払い):30万円 その他(論文カラー印刷費,別刷印刷費等):10万円
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