航空機レーザー測量(LiDAR)による数値標高モデル(DEM)を初期条件として用いることができる地形シミュレーションモデル(LEMs)の構築とその地形学的評価を主たる目的として,平成23年度から4年間研究を行った。 そのプロトタイプとして作成した二次元(平面)のLEMsは,約100平方キロメートルの流域を対象として,空間解像度25m程度のDEMを初期条件として用いた場合には,現在の地形学の知識に照らしてある程度信頼できるシミュレーションを行うことができることを,福島県楢葉町周辺の地形を対象とした結果でまとめた論文や,高知県室戸岬周辺の地形を対象とした結果を動画でまとめた学会発表などを通して示すことが出来たと考えている。 一方で,このLEMsをLiDAR-DEMを初期条件として用いるには,計算方法,計算速度,そして結果の評価方法と全ての点において課題が多いことが具体的に明らかとなってきた。特に大きな問題はプログラム中の河川の流路構築アルゴリズムの問題であり,この問題を解決しなければLiDAR-DEMによるシミュレーションはほぼ不可能であることが分かった。 そこで,最終年度であった平成26年度は,これらデータの高解像度化に伴う課題の整理を行うとともに,大きな問題のいくつかを考慮せずに済む条件やフィールドを設定して研究を進めた。具体的には,高知県室戸岬周辺および房総半島南部の海成段丘地形を対象として,一次元(断面)と二次元での両方のLEMsを構築し,これらの結果を比較しながら研究を進めている。この成果の公表を本科研費実施期間中に行うことはできなかったが,今後速やかに発表する予定である。
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