本研究は,カンボジア王国におけるトンレサップ湖流域を対象として,経年的・季節的な物質収支の解明について,栄養塩・溶存酸素がどのように分布しているかを明らかにすることを目的とした。特に,同湖の湖岸域に形成されている浸水林の影響に着目し,重点的に調査を実施した。本成果では,水質の空間分布および季節変化について,雨季と乾季との違いについて考察をすすめた。その結果,水質成分はあまり変化が生じないが,溶存酸素について浸水林帯で差異が生じることを明らかにした。本結果は,すなわち湖の高水位期では,浸水林帯における湖底・河床部分で,より水の動きが少なく,酸素が消費される環境が形成されていることを示唆した。
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