研究課題
最終年度に実施した研究成果として,2007~2010年に撮影されたALOS/AVNIR-2の衛星データを用いて,天山山脈全域の氷河前面にある0.001km2以上の氷河湖を対象に,マニュアルによるデジタイジングで約1600の氷河湖のポリゴンデータを作成した.ポリゴンの属性データには,氷河湖ID,使用した衛星画像,撮影日,緯度経度,流域名,面積,高度,氷河湖タイプなどの基本情報を加えた. 天山山脈の氷河湖のサイズ分布は,巨大な氷河湖が分布する東ヒマラヤに比べるとかなり小さく,0.001~0.005km2のサイズが全体の7割を占める.1970年代に撮影されたHexagon KH-9とALOSの衛星データから取得した氷河湖数を比較した.両時期の氷河湖数はほぼ同じであったが,現存する氷河湖の多くは1980年代以降に出現したものであった.この地域では,1950~1970年代に氷河湖決壊洪水が多発しており,これは1980年代以降に出現した次世代の氷河湖が決壊を生じはじめていると考えられる.また,数か月間~1年ほどの短期間で発達して決壊する複数の短命氷河湖を確認した.調査地の6つの河川の縦断面図を作成したところ,氷河湖から居住地までの距離は短くて8~10㎞ほどである.20の氷河湖の体積と面積の関係式からテスケイ・アラトー山脈北側斜面の氷河湖の体積を求めたところ,50万m3以上の水量を持つ氷河湖は存在しなかった.2008年7月に生じたズンダン西氷河湖で43.7万m3であるので,最大でも洪水範囲はそれを少し上回る程度である.この結果は,この地域全体の氷河湖決壊洪水で生じた土石流は山麓の扇状地付近でとどまり,その後の洪水流が下流の河川から少しあふれる程度であることがわかった.
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地学雑誌
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DOI:10.5026/jgeography.121.215
Global Environmental Research
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