研究課題/領域番号 |
23701035
|
研究機関 | (財)立山カルデラ砂防博物館 |
研究代表者 |
福井 幸太郎 (財)立山カルデラ砂防博物館, その他部局等, その他 (10450165)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | 立山連峰 / 剱岳 / 氷河 / 現存 / 御前沢雪渓 / 三ノ窓雪渓 / 小窓雪渓 |
研究概要 |
平成23年度は、立山の主峰雄山東側の御前沢(ごぜんざわ)雪渓で高精度のGPS(衛星利用測位システム)を使用して流動観測を実施するとともに、御前沢と同じく厚い氷体をもつ剱岳の三ノ窓雪渓、小窓雪渓でもアイスレーダーを使った氷の厚さの観測と流動観測を実施した。(1)三ノ窓雪渓では、厚さ15~20mの積雪の下に厚さ30m以上の氷体を確認できた。小窓雪渓では、厚さ15~20mの積雪の下に厚さ20~30mの氷体を確認できた。三ノ窓、小窓両雪渓とも氷が塑性変形で流動するのに十分な厚さを持っているといえる。(2)三ノ窓雪渓では、約1ヶ月で24cm、31cmと誤差以上の有意な流動が観測された。流動方向は、東南東で雪渓の最大傾斜方向と一致した。小窓雪渓についても、約1ヶ月で17cm、32cmと誤差以上の有意な流動が観測された。小窓雪渓も流動方向は、雪渓の最大傾斜方向とほぼ一致した。御前沢雪渓でも、52日間で7~9cmと誤差以上の有意な流動が観測された。御前沢雪渓では、GPSデータをクロスチェックするためにトータルステーションを使った測量も実施したところ、GPSデータとほぼ一致する結果が得られた。また、三ノ窓雪渓と御前沢雪渓では、GPS測量に用いたポールを、防水デジタルカメラで約1ヶ月間インターバル撮影した。その結果、氷体の流動に伴い、ポールが少しずつ下流側に移動していく様子を撮影・記録できた。(3)観測を行った3つの雪渓全てで氷体の流動が観測されたことから、これらの雪渓はすべて現存する「氷河」であることが分かった。研究成果をすみやかに発信するため、日本雪氷学会誌「雪氷」に観測結果を原著論文として投稿した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度に予定していた観測は全ておおむね成功し、立山連峰の3つの多年性雪渓は現存する「氷河」であることが分かった。そして、観測結果を学会誌に原著論文として投稿することが出来た。本研究の最大の目的は、調査した3つの多年性雪渓が現存する「氷河」であると実証することである。このため、研究自体はおおむね順調に進展しているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
極東地域では、カムチャッカ半島だけでなくて日本にも現存する「氷河」が分布していることを国外の研究者にも広く認められるために、観測結果を国際学会の学術誌に投稿する予定である。また、氷河は長期間、連続して流れているものなので、立山の御前沢雪渓、剱岳の三ノ窓雪渓、小窓雪渓では引き続き流動観測を実施するとともに、氷河の可能性のある国内のほかの多年性雪渓、鹿島槍ヶ岳のカクネ里雪渓や立山の内蔵助雪渓でGPSを使った流動観測やアイスレーダーを使った氷体の厚さの観測を実施する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は立山の御前沢雪渓、内蔵助雪渓、剱岳の三ノ窓雪渓、小窓雪渓、鹿島槍ヶ岳のカクネ里雪渓でGPSを使った流動観測やアイスレーダーを使った氷体の厚さの観測を実施する。このため、現地調査のための旅費を研究費から支出する。現地調査の際には山岳ガイドを雇用する必要がある。このための謝金を研究費から支出する。論文の投稿料と英文校閲のための費用も研究費から支出する。
|