研究課題/領域番号 |
23701037
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
山本 雅達 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (40404537)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 腫瘍学発ガン |
研究概要 |
23年度は(1)in vivoにおいてABCB10の機能不全と悪性腫瘍のPPIXの蓄積との関連性を明らかにする事を目的として、Abcb10 f/-:mx1-creまたはAbcb10 f/+:mx1-creマウスをC57BL6系統への戻し交配の後、Diethylnitrosamine(DEN)誘導化学肝癌モデルマウスを作製した。(2)in vitroではAMLや乳癌、大腸癌などのSNPs解析から、ABCB10遺伝子のコーディングエキソンに5つのミスセンス変異が確認されていることから、これらの変異によるABCB10の機能的変化を明らかにするために、ABCB10遺伝子についてc491G>T(A150S)、c625G>T(K194N)、c767C>G(R242G)、c1477C>A(N478K)、およびc1676G>A(C545N)の変異Abcb10-Hisタグ発現ベクターを作製した。また、これらの宿主となる大腸がん細胞(HCT29、HT15、SW418、DLD)のエンドレベルのABCB10をノックダウンするために、ヒトABCB10遺伝子の3’UTR領域に相補するShRNA発現ベクターの作製を行なった。(3)Abcb10欠損マウスの解析をより詳細に行なった。Abcb10 -/-マウスは胎生11.5日において造血不全により死亡する。成獣Abcb10 f/―:mx1-creマウスではHemeが減少し、その前駆体であるPPIXが20~30倍ほど蓄積する。このことから、その補欠分子である鉄(Fe2+)に注目してその細胞内局在を明らかにするために、Abcb10 -/-マウス(11.5日胚)および、Abcb10 f/―:mx1-creマウスの電子顕微鏡観察を行なった。その結果、Abcb10を欠損する未分化な血球細胞では、そのミトコンドリアに鉄が蓄積していることがわかった(投稿準備中)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究概要(1)についてはAbcb10 f/-:mx1-creまたはAbcb10 f/+:mx1-creマウスをC57BL6系統への戻し交配の後、肝癌モデルマウスを作製したが、転移能を自主的に獲得しうる細胞を作製するには困難であることが判明した。
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今後の研究の推進方策 |
研究概要(1)について、FVB系統はDMBAとPMAを用いて肝臓、肺、リンパ節への転移能を有する扁平上皮癌を作出できることが明らかとなっていることから、Abcb10 f/-:mx1-creまたはAbcb10 f/+:mx1-creマウスの遺伝的背景をFVB系統へと変更して皮膚ガンモデルマウスを作製する予定である。過排卵処置したマウスに由来する卵子を用いて人工授精することにより、戻し交配の期間を短縮する。また(2)では(1)の戻し交配に要する期間に、まずヒトAbcb10変異体発現株をヌードマウスに移植し、Abcb10が腫瘍細胞の増殖能や転移能にどのように関与するかを調べる。(3)Abcb10を欠損する細胞では、鉄がミトコンドリアに蓄積していることを明らかにした。本研究ではAbcb10欠損マウスを用いて化学発癌や移植・転移モデルマウスを作製し、悪性腫瘍のPPIXの蓄積とABCB10の機能不全との関連性を明らかにする事、さらにはABCB10変異による腫瘍の悪性化を阻害する薬物のスクリーニング・薬効評価モデルを作製し、将来的にはPPIX類似構造を有し、正常組織ではFECHによって無毒化される、PPIX高蓄積(ABCB10機能欠損性)悪性腫瘍を標的とした薬剤開発を目的としていたが、これに加えて鉄の蓄積も腫瘍特異性を示すマーカーとして利用可能と考えられる。抗マラリア薬であるアルテミシミンは鉄剤と併用することで非常に強い細胞毒性を示す。また鉄は生体内で活性酸素の産生を最も触媒する生体内分子である。このことから、PPIX類似構造を有する薬剤開発に加えて、鉄と相加-相乗的に細胞毒性を発揮する、構造にはとらわれない薬剤開発の可能性を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
(1)FVBマウス購入、維持、繁殖費用(2)ヌードマウス購入、維持費用(3)(1)および(2)マウスの遺伝学、生化学、組織学、血液学的解析費用に使用する。
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