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2012 年度 実施状況報告書

ABCB10ノックアウトマウスを用いたヘム合成不全によるガン悪性化モデルの作製

研究課題

研究課題/領域番号 23701037
研究機関鹿児島大学

研究代表者

山本 雅達  鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (40404537)

キーワード腫瘍学発ガン
研究概要

(背景と目的)Hemeの生合成経路はミトコンドリア‐細胞質間の移動を伴うが、細胞内外のHemeの輸送経路やその担当分子については不明な点が多い。我々はAbcb10ノックアウトマウスを作製して解析した結果、Abcb10ホモ欠損(Abcb10 -/-)マウスでは血球分化不全とHemeの産生不良、さらにHemeの前駆体であるProtoporphyrinIX(PPIX)とReactive Oxigen Species(ROS)が著明に蓄積していたことを見い出し、ABCB10はHemeの生合成過程に必須である事を明らかにしている。
一方で、網羅的多型解析によりABCB10のナンセンス変異と腫瘍の悪性化に相関することが示唆されている。また、転移した腫瘍細胞ではPPIXの高蓄積が観察され、これを利用して転移巣発見・早期診断に応用されつつある。しかしながら、転移能を有する悪性腫瘍のPPIXの蓄積機構と、PPIXが悪性化に貢献するメカニズムは未だ明確に示されていない。
本研究では、Abcb10ノックアウトマウスを用いて同種型腫瘍移植-転移モデルマウスを作製し、PPIXの蓄積と腫瘍の悪性化にABCB10の機能不全がどのように関わるかを解明することを目的とした。
(研究結果)肝臓特異的にAbcb10を欠損するマウス(Abcb10 f/-:mx1-cre)をC57BL6系統への戻し交配の後、DEN化学発癌による肝癌モデルマウスを作製した。このマウスから得られた肝臓腫瘍部から初代培養を行ない腫瘍細胞を数種作製した。これらの細胞について肝細胞のマーカーであるアルブミン産生能を検討した結果、いずれも陰性であった。
このことから、マウス肝癌細胞に由来する自主的に転移能を獲得しうる細胞を作製することは困難であることが判明した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当初の研究期間ついては同種型腫瘍移植-転移モデルマウスを作製する細胞を得ることが出来なかった。このことからAbcb10の生理機能と発癌への関与をより詳細に検討するために以下の実験を行なった。
(1)多くの腫瘍細胞においてFechの消失が観察されることから、Abcb10欠損細胞でFechの発現、および安定性について検討した。その結果、Abcb10欠損細胞では、Fechの発現そのものには影響しないが、ミトコンドリアに局在するFechが著名に減少していることを見出した。
(2)また生体内における鉄の高蓄積は発癌をより助長する知見が報告されていることから、Abcb10欠損細胞に見られた鉄の蓄積が、細胞のどこに局在するかを検討した。その結果、Abcb10 -/-マウスにおけるROSの蓄積はFechの消失によってHemeの補欠元素である鉄の利用と代謝に異常が生じると予想した。Abcb10 -/-マウスにおける鉄の細胞内動態について分析電顕を用いて解析した結果、Abcb10 -/-マウス血球細胞のミトコンドリアに過剰の鉄が蓄積していることを見出した。
(3)成獣マウスにおいてAbbcb10が欠損することで、どのような病態変化が生じるのかを検討するために血液一般検査を行なった。その結果、野生型マウスに対して白血球細胞数に差は見られなかったが、ヘモグロビン産生量は半減、赤血球数は有意に減少し、逆に網状赤血球の著名な増加が確認された。骨髄においては鉄芽球が観察された。
このことから、Abcb10が欠損することで、ヘモグロビン産生不良、血球分化不全とPPIXの高蓄積を伴うヒト骨髄性ポルフィリン症、および鉄芽球性貧血の両方の病態を示すことを明らかにした。

今後の研究の推進方策

C57BL6系統を用いた肝癌細胞の樹立は困難であった。一方FVB系統はDMBAとPMAを用いて肝臓、肺、リンパ節への転移能を有する扁平上皮癌を作出できることが明らかとなっている。このことからAbcb10を皮膚特異的に欠損するマウス(Abcb10f/-:K14-cre)をFVB系統で作製し、皮膚ガンモデルマウスを作製する予定である。

次年度の研究費の使用計画

本研究期間においてAbcb10の生理機能をより詳細に検討することで、Abcb10はFechの発現そのものには影響しないが、ミトコンドリアに局在するFechの安定性に寄与すること、またAbcb10が欠損する血球細胞のミトコンドリアには過剰の鉄が蓄積すること、さらに血球細胞特異的にAbbcb10が欠損する成獣マウスはヒト骨髄性ポルフィリン症および鉄芽球性貧血の両方の病態を示すことを明らかにした。
以上について論文作製に着手し現在投稿中であるため、論文掲載料として補助事業期間の延長を申請した。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2012

すべて 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)

  • [学会発表] Abcb10はHeme合成に必須であって、その欠損マウスはヒトErythropoietic protoporphyriaと類似の病態を示す2012

    • 著者名/発表者名
      山本雅達
    • 学会等名
      第85回日本生化学会大会
    • 発表場所
      福岡
    • 年月日
      20121215-20121215
    • 招待講演
  • [学会発表] Abcb10, the gene knockout mice exhibit similar to human Erythropoietic protoporphyria, is essential for Heme synthesis2012

    • 著者名/発表者名
      山本雅達、有村博史、福重智子、中川昌之、金蔵拓郎、古川龍彦
    • 学会等名
      第7回トランスポーター研究会
    • 発表場所
      京都
    • 年月日
      20120600

URL: 

公開日: 2014-07-24  

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