研究課題
肝臓特異的にAbcb10を欠損するマウス(Abcb10 f/-:mx1-cre)をC57BL6系統への戻し交配の後、DEN化学発癌による肝癌モデルマウスを作製した。このマウスの肝臓腫瘍部から初代培養を行ない腫瘍細胞を数種作製した。これらの細胞について肝細胞のマーカーであるアルブミン産生能を検討した結果、いずれも陰性であった。このことから、マウス肝癌細胞に由来する自主的に転移能を獲得しうる細胞を作製することは困難であることが判明した。そこで当初の研究期間については同種型腫瘍移植-転移モデルマウスを作製する細胞を得ることが出来なかったことからAbcb10の生理機能と発癌への関与をより詳細に検討するために以下の実験を行なった。(1)多くの腫瘍細胞においてFechの消失が観察されることから、Abcb10欠損細胞でFechの発現、および安定性について検討した。その結果、Abcb10欠損細胞では、ミトコンドリアに局在するFechには影響しないが、細胞質画分でのFechが著名に減少していることを見出した。(2)Abcb10 -/-マウスではHemeの合成不全が見られたことから、その補欠元素である鉄の動態に注目して解析を行なった。分析電顕を用いて解析した結果、Abcb10-/-マウス血球細胞のミトコンドリアに過剰の鉄が蓄積していることを見出した。(3)成獣マウスにおいてAbbcb10が欠損することで、どのような病態変化が生じるのかを検討するために血液一般検査を行なった。その結果、野生型マウスに対して白血球細胞数に差は見られなかったが、ヘモグロビン産生量は半減、赤血球数は有意に減少し、逆に網状赤血球の著名な増加が確認された。骨髄においては鉄芽球が観察された。このことから、Abcb10が欠損することで、ヘモグロビン産生不良、血球分化不全とPPIXの高蓄積を伴うヒト骨髄性ポルフィリン症、および鉄芽球性貧血の両方の病態を示すことを明らかにした。Yamamoto M et al 2014 Mol Cell Biol. 1077-84
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