研究課題/領域番号 |
23701042
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
笹島 順平 旭川医科大学, 大学病院, 医員 (80451467)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | マイクロRNA / 遺伝子改変マウス / 膵臓癌 / 3次元培養 |
研究概要 |
膵臓に前癌病変である異型腺管PanINを自然発症するPdx1-Cre;LSL-KrasG12D strain(PanINマウス)および膵癌を自然発症するPdx1-Cre;LSL-KrasG12D;p53lox/+ strain(PDACマウス)から初代PanIN細胞、初代PDAC細胞の分離と、その細胞株化に成功した。細胞株は初代細胞に比べて扱いやすく、十分なサンプル量が得られるものの、その形質が変化する危険性がぬぐいきれないため、マイクロRNAアレイのサンプルは分離直後の初代細胞を使用することとした。2倍以上の変化とデータの信頼性・再現性をもとに候補となるマイクロRNAを抽出したところ、PanINに比べてPDACでその発現が増加した発癌促進マイクロRNA候補18種と、逆に発現が減少した発癌抑制マイクロRNA候補15種を抽出することができた。 これらの候補マイクロRNAの絞り込みをmiRbaseから得た情報を元に行った。具体的には候補マイクロRNAの塩基配列から標的遺伝子を検索し、そのデータをもとに発癌促進マイクロRNA2種、発癌抑制マイクロRNA1種に注目することとした。現在樹立したPanIN・PDAC細胞株(マウス由来)およびヒト膵癌細胞株のマイクロRNA発現を評価したのち、siRNAを用いてノックダウンを行い、標的遺伝子の発現変化の評価を行うとともに、3次元培養による培養形態の変化について解析を進めている。 また細胞株樹立にともない、細胞株の評価を行った。細胞株は複数の株の樹立を行ったが、間質のコンタミを評価するためフローサイトメトリーによる表面抗原解析を行い、EpCAM陽性細胞のみを上皮と考え、MACSシステムを用いて純化、さらにマウス移植による造腫瘍能の評価を行った。PanIN細胞株の異型腺管形成の確認は腎皮膜下移植でようやく確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
すでに初代細胞の分離技術は確立習得しており、マイクロRNAアレイのサンプル準備は特に技術的な問題なく行うことが出来たが、マウスの準備に手間取った。PanINマウスもPDACマウスもわれわれの施設でコロニーを確立・維持しているが、予定通りのマウスを確保するのに結局半年ほどの期間を要した。しかしながら十分検討に耐えうるサンプル数を確保することができ、信頼性の高いデータを得ることが出来た。 またsiRNAの初代細胞への導入が困難であった。すなわち初代細胞はそのviabilityが極めてデリケートであり、培養形態も浮遊sphere培養であるため、そのままでは導入が困難なため、細胞株化する方針とした。細胞株化はその細胞の評価を十分行う必要があり、フローサイトメトリーによる表面抗原解析、マウス移植による造腫瘍能の確認を行った。特にPanIN細胞株の評価はPanINといわれる異型腺管の形成を確認したいところであったが、通常の皮下移植では腫瘍形成が確認できず、さまざまな試行錯誤の末、腎皮膜下移植でPanINの形成を確認することができた(ただし肉眼的には腫瘍の形成は確認できない)。この細胞株のvaridationに多くの時間が必要であった。しかしながらこの点を曖昧にすると本研究の根幹、信頼性を損なう可能性が残るため、避けて通ることはできないと判断し、あえて時間をかけて評価した。そのために予定した3次元培養による評価を進めることが出来ず、研究が遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
候補マイクロRNAのノックダウンによる3次元培養における培養形態の変化の評価を最優先目標とする。現在進めている細胞株の候補マイクロRNA発現解析とsiRNA導入を終了し、実際に3次元培養を行う。3次元培養は初代細胞では分化度を反映した培養形態を呈するが、細胞株の場合は工夫が必要であり、まずはPanIN細胞株での培養形態確認を急ぐ。細胞株はsingle cellでの培養を行っているが、single cellのままでは3次元培養でも腺管形成を呈するのは困難と予想される。まずはこの点を解決するには、浮遊sphere培養系への移行が必要であろうと考えており、この点について早急に解析を進めたい。 培養系の確立と平行して、in vivoにおける造腫瘍能の評価を平行して進めたい。ヌードマウスを用いてノックダウンをした細胞株を移植し、得られた移植腫瘍の評価を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費は主として最優先課題であるin vitroでの解析のための消耗品、すなわちsiRNAベクターや3次元培養のための消耗品などの購入に当てる。また可能であれば、平行してin vivoの評価を行うための実験動物の購入にも使用したい。
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