膵臓に前癌病変である異型腺管PanINを自然発症するPdx1-Cre;LSL-KrasG12D strain(PanINマウス)および膵癌を自然発症するPdx1 -Cre;LSL-KrasG12D;p53lox/+ strain(PDACマウス)から初代PanIN細胞、初代PDAC細胞の分離と、その細胞株化に成功した。分離した腫瘍腺管はEpCAM陽性であり、免疫不全マウスへの移植により、その悪性度に応じた造腫瘍能を認めた。しかしながら前年度に作成した細胞株をマウスに移植し、その組織構造を評価したところ、もとの膵癌自然発症マウスでは保たれていた腺管構造が大部分で消失していることが判明した。そのため、腫瘍腺管そのものの移植腫瘍では元の形態が保たれており、細胞株の使用は分化度の変化が否定出来ないため断念した。また腫瘍腺管を3次元培養で培養すると、前癌病変由来の腫瘍腺管はきれいな腺管構造を形成するが、膵癌由来の腫瘍腺管は規則的な形態構造を示さず、放射状に増殖していった。この3次元培養はその腺管の分化度を反映した形態を示すものと考えた。 分離した腫瘍腺管を用いてマイクロRNA アレイを行ったところ、PanINに比べてPDACでその発現が増加した発癌促進マイクロRNA候補18種と、逆に発現が減少した発癌抑制マ イクロRNA候補15種を抽出することができた。これらの候補マイクロRNAの絞り込みをmiRbaseから得た情報を元に行い、発癌促進マイクロRNA2種、発癌抑制マイクロRNA1種に注目し、腫瘍腺管に対してこれらのマイクロRNAのノックダウンを試みた。しかしながらsphere状を呈した腫瘍腺管に対するノックダウンは感染効率の問題から困難が多く、十分な抑制効果を得ることはかなわなかった。
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