研究課題/領域番号 |
23701045
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
吉松 康裕 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任研究員 (60586684)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 国際情報交流 |
研究概要 |
平成23年度はin vitro解析としてはマウス膵臓由来の不死化した血管内皮細胞を用いてTGF-β2が誘導する内皮間葉分化転換を引き起こすメカニズムの一つとして、間葉系マーカーとしてSMAの発現制御に注目して解析を進めた。我々はこの細胞がTGF-β2下流の主要経路であるSmad経路を介して、そのさらに下流でRhoシグナルと転写因子MRTF-Aの発現誘導および核内移行(核内蓄積)による活性化という2つの経路による協調的な作用によりSMAを含む間葉系マーカーの発現を亢進させることを見出した。またグアニンヌクレオチド交換因子の一つであるArhgef5がTGF-β2によりSmad経路を介して発現誘導され, 上記のRhoシグナルの活性化に寄与していることを見出して論文に発表した。さらにこの細胞においてTGF-β2によるSMAなどの間葉系マーカーの発現誘導がTGF-β2以外のサイトカインA(仮称、未発表)によってさらに亢進することを見出した(未発表)。この発見に基づいて現在マイクロアレイを行っており、TGF-β2およびサイトカインA(仮称)の標的遺伝子、下流遺伝子を年度末から解析中である。Tie2-Creマウスを用いたin vivoにおける内皮間葉分化転換の解析においてはTGF-βRIの阻害剤で内皮間葉分化転換を阻害してTGF-βがEndMTの主要な要因になっていることが示されるか検討を行った。この系では他のシグナルが内皮間葉分化転換に関与している可能性も考えられるため、他の阻害剤との併用効果の検討に入った。また、TGF-βシグナルを阻害するためにTGF-β の中和抗体を発現する株を移植して内皮間葉分化転換が阻害されるかを検討するための準備に取りかかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでのところ、当初の研究計画からすると少し方向転換している点もあるが、「内皮間葉分化転換のメカニズムの解明」という点においては全くぶれておらず、着実に研究が進展していると言える。具体的には腫瘍血皮細胞や他の初代内皮細胞を用いて内皮間葉分化転換の効率を規定する内因性因子の同定を目指す点については現在解析中でまだ同定には至っていないが、マイクロアレイのデータを照らし合わせることで平成24年度初期の時点で可能になると思われる。また マウスを用いた内皮間葉分化転換の阻害方法については動物実験で時間がかかることが初めから想定されており24年度まで継続の予定であったし、現在複数のアプローチを講じていることで解決へ向けて前進していると言える。一方で、これまで当初の研究計画では想定していなかったSMAの発現制御機構を解明して論文発表に至ったことから研究の全体の進捗状況としては順調に進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き腫瘍血管内皮細胞や他の初代内皮細胞を用いてマイクロアレイを行い、内皮間葉分化転換の効率を規定する内因性因子の同定を目指す。平成24年度初期にこれを同定した後、これらの遺伝子の機能解析を行う。具体的には遺伝子を高発現させた細胞株、発現を抑制した株(gain/loss-of-function)を用いて内皮間葉分化転換の効率をin vitroおよびマウスモデルで検討し、同定したものが真に内皮間葉分化転換の規定因子であることを実証する。また、引き続きマウスを用いた内皮間葉分化転換の阻害方法の検討も行っていく。Tie2-Creマウスの解析では当初血管内皮特異的な発現をねらったものだが、Tie-2が血管内皮以外のマクロファージなどに発現していることが知られているため、内皮間葉分化転換によって生成されたCAFがmacrophage由来ではないことを示す解析も当初の研究計画には盛り込まれていなかったが、必要であるので行っていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は腫瘍血管内皮細胞や他の初代内皮細胞を用いてマイクロアレイを行って、すでに行っているマイクロアレイのデータとの比較を行った方がよいと考えられるので、これらに研究費を使用する。また、本年度に比重が増すと思われる動物実験で使用するマウスの購入に使用する。ここまでの実験結果が十分に実証された場合には年度後期に複数の学会発表を予定している。
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