平成24年度は内皮間葉分化転換を起こしやすい内皮細胞を用いて内皮細胞の間葉分化転換のマーカーとなりうるSmooth Muscle Alpha Actin (SMA)やSmooth muscle protein 22-alphaの発現を協調的に亢進させる炎症性サイトカインおよび抑制的に働く細胞増殖因子(FGFs)を同定した。前者については中和抗体および下流シグナル因子の阻害剤を用いてSMAの発現を抑制できるかを検討し、後者については下流のシグナル因子の阻害剤を用いてSMAの発現を亢進させることができるかについて検討を行ってきた。TGF-βの効果およびFGFの効果を解析するため、それぞれを添加した細胞および両者を添加した細胞から抽出したRNAを元にcDNAマイクロアレイを行った。この解析からFGFの下流で働く転写因子の候補を絞り込み、解析を進め、このうち一つの転写因子の作用を抑制するとSMAの発現が亢進することを見出した。現在はSMAの発現誘導・抑制メカニズムについてこの転写因子と作用DNA領域について詳細な解析を進めている。一方、マウスを用いた動物実験では内皮間葉分化転換をによって腫瘍関連線維芽細胞になった細胞をトレースできるVE-cadherin-Creマウスの系を使用してTGF-βを高発現させた細胞株の移植やTGF-βの阻害剤およびFGF下流に位置する因子の阻害剤を用いた実験を行い、腫瘍関連線維芽細胞の生成度を比較して内皮間葉分化転換への効果を検討した。現在、論文投稿へ向けた準備を進めており翌年度上半期 (平成25年度上半期)での投稿を予定している。内皮細胞の間葉分化転換効率を規定している因子については様々な内皮細胞を用いた解析によって同定を試みる予定であったが、学会発表できるほどの十分な解析ができなかった。これについては今後も引き続き解析を進めていく予定である。
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