研究課題/領域番号 |
23701049
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
船坂 龍善 金沢大学, フロンティアサイエンス機構, 博士研究員 (60564127)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 核膜孔複合体因子 / 上皮間葉移行 |
研究概要 |
細胞核膜上の核膜孔は、約30種類の核膜孔複合体因子によって構成されており、細胞質-核間の分子輸送の制御に関係している。現在核膜孔複合体因子に関する研究は活発に進められ、様々な知見が集積されつつあるが、癌の悪性化に関するメカニズムについての知見はない。そこで本研究では、核膜孔複合体因子のひとつであるRae1(RNA export factor 1)と、上皮間葉移行(EMT)の指標のひとつでありまた癌転移に深く関わるE-カドヘリンとの相互作用について詳細に解析して、上皮間葉移行におけるRae1の役割を検討し、さらにはRae1による癌悪性化機構の分子機序を解明することを目的している。研究代表者はRae1がE-カドヘリンと相互作用することを免疫沈降実験により見出し、また細胞免疫染色実験によりRae1は細胞膜上でE-カドヘリンと共発現しているのを観察した。この細胞膜上の発現パターンは、上皮様細胞形態を示す乳癌細胞MCF7やT47Dにおいて観察され、間葉系細胞の形態を示す乳癌細胞MDA-MB-231やBT549では確認できなかった。また間葉系の乳癌細胞よりも上皮様の乳癌細胞のほうがRae1が多く発現していた。Rae1は核膜孔において核内と細胞質間を移動できる可動性の分子で、物質と結合して移動することで細胞質-核間の物質輸送に関与しているとされる。またRae1は乳癌の進展に重要であるとの報告もある。これらの結果は、核膜孔複合体因子であるRae1がEMTの指標とされるE-カドヘリンと相互作用し、そしてその発現・機能を制御している可能性を示唆しており、本事象の詳細な検討は該当分野に革新的な知見をもたらす可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画は、(1)Rae1とE-カドヘリンの相互作用のメカニズムを、分子生物学的・細胞生物学的・生化学的手法を用いて明らかにする。Rae1の細胞膜における発現機構についても考察する。(2)Rae1 - E-カドヘリンの相互作用に基づき、EMTにおけるRae1の役割・およびそのメカニズムを明らかにする。(3)細胞を用いた実験による結果を確認しさらに進めるため、マウスを用いた実験を行い、Rae1の癌悪性化における詳細な役割を解明する。といった目標を設定している。本年度は3年間の予定で交付される初年度であり、本年度中に上記(1)の目標はおおむね達成できたと考えている。また、研究成果について論文発表や学会発表を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、交付申請書にかかげた(2)Rae1 - E-カドヘリンの相互作用に基づき、EMTにおけるRae1の役割・およびそのメカニズムを明らかにする。(3)細胞を用いた実験による結果を確認しさらに進めるため、マウスを用いた実験を行い、Rae1の癌悪性化における詳細な役割を解明する。といった目標を達成するように研究を推進していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究計画の進行上、次年度以降により多くの物品が必要になることが予想されたため、次年度以降に使用できるよう今年度分に未使用分の研究費が生じた。次年度以降の研究費に関しては、交付申請書に記載したとおり免疫ブロット・染色用の試薬・抗体や細胞培養用試薬、消耗品としてフラスコやチューブなどのプラスティック製品などを購入する予定である。
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