研究課題/領域番号 |
23701054
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
木戸屋 浩康 大阪大学, 微生物病研究所, 助教 (00543886)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 癌研究 / 血管新生 / miRNA |
研究概要 |
本研究では、癌治療法における新たな腫瘍血管制御法の開発の可能性を探るため、その手段としてマイクロRNA(miRNA)による血管新生制御機構を明らかにすることを目的とする。平成23年度は、腫瘍血管にて特異的に発現変化し、血管新生の引き金として働くmiRNA を同定することを目的として研究を進め、具体的には以下の実験を行った。まず、Lewis lung carcinoma (LLC)細胞の静脈内投与による肺転移モデルマウスから、腫瘍内の血管内皮細胞をセルソーターにて回収した。この腫瘍血管内皮細胞におけるmiRNAの発現をinvitrogen 社の「Ncode miRNA プロファイリング」にてマイクロアレイ解析した。先行して行っていた研究の結果と一致して、mir-23a、mir-30d、mir-125b、mir-126、mir-341、mir-696の発現上昇が認められた。これら候補遺伝子について、Real-time PCR解析による確認実験、および、培養血管内皮細胞株(HUVEC)を用いた、増殖活性、管腔形成活性、遊走活性についてin vitro の解析を行った。その結果、mir-125bが血管内皮細胞の血管形成活性に強く関与していることを示唆するデータが得られた。また、生体内の血管新生モデルであるMatrigelのマウスへの移植実験にて、mir-125bの機能促進・阻害の効果を検討したところ、mir-125bが血管新生の制御活性を有することを示唆する結果が得られている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の研究では当初の目標としていた、腫瘍血管内皮細胞にて特異的に発現が変化しおり血管新生に関与しているmiRNAとして、mir125bを同定することができた。本研究全体を通して、研究の対象となるmiRNAを同定することが最も重要な課題であったが、それを初年度の研究で達成できたことは今後の研究計画を考える上で大きな進展である。また、同定したmir125bが研究の立案段階での想定を超えるような強い血管新生制御活性を有することを示唆する結果が、vitroおよびvivoでの様々な研究結果から得られている。以上のような状況をふまえると、本研究は「おおむね順調に進展している」と自己判断するに値する思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、前年度の研究にて同定された血管新生の引き金として機能しうるmi125bについて、より詳細なメカニズムの解析を行うと共に、実際に腫瘍中の血管新生を制御しうるか、抗腫瘍効果に繋がるか検討を行う。miRNA がどのようなメカニズムで血管新生を制御しているかを調べる上で最も重要となるのが、発現制御される標的遺伝子の解析である。標的遺伝子の探索方法としては、TargetScan やmiRanda などのWeb 上で標的遺伝子を解析できるデータベースが公開されているので、それらを利用する。こうして絞り込まれた標的遺伝子の候補については、miRNAの予想結合領域をクローニングして、レポーターアッセイを行う。また、mir125bが癌治療の標的となり得るかを検討するため、LLC 細胞などの腫瘍細胞をマウスの皮下に移植することにより作成した担癌モデルに対して、腫瘍血管内皮に対するmir125bの機能促進・阻害を行い、腫瘍血管新生への影響や腫瘍増殖を抑制できるかの確認を行う。腫瘍の増殖は経時的に観察を行うことにより評価し、腫瘍中の血管新生については切片の免疫染色にて解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
前述した研究推進方策を実行するため、次年度は多くの動物実験を行う必要があるため、研究費は実験動物であるマウスの購入、飼育、実験器具の購入に大半を使用する予定である。さらに、引き続きmiRNAの促進および阻害実験を行っていく予定であり、そのための実験試薬を購入する必要がある。加えて、細胞レベルでの解析を行うための細胞培養器具、培養試薬、サイトカインなどを購入する。また、得られた研究結果を広く公表し、さらに新たな知見を得るため、国内外の学会・研究会への参加を予定しており、そのための旅費も申請している。
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