研究課題
固形腫瘍の増大と血管新生は密接に関連していることが知られており、これまで血管新生を対象とした癌研究が盛んに行われている。本研究では、癌治療法における新たな腫瘍血管制御法の開発の可能性を探るため、その手段としてマイクロRNA(miRNA)による血管新生制御機構を解析した。miRNAとは小分子の一本鎖noncoding RNAで、標的となるmRNAに対して翻訳の抑制や分解を促進することにより遺伝子発現を制御する。最近では、miRNAの機能阻害による核酸医薬が次世代の医薬として注目を集めており、治療効果も多数報告されつつある。我々は、腫瘍血管にて特異的に発現変化して血管新生に関与するmiRNA を同定するため、Lewis lung carcinoma (LLC)細胞の静脈内投与による肺転移モデルマウスから、腫瘍内の血管内皮細胞を単離し、マイクロアレイにて解析した。その結果、腫瘍血管内皮細胞において特異的に発現上昇するmiRNA群を同定した。これら候補miRNAについて、培養血管内皮細胞株(HUVEC)を用いる事により解析を行った。その結果、mir-125bが血管内皮細胞の血管形成活性に強く関与していることを示唆するデータが得られた。さらに、mir-125bが標的とする遺伝子の探索を行った結果、血管内皮細胞の細胞間接着に働くVE-cadherinを制御する事が明らかとなった。また、mir-125bを標的とする新薬開発の可能性を検討するため、マウス担癌モデルの腫瘍血管に対してmir-125bの過剰発現および機能阻害させたところ、腫瘍中の機能的な血管の数が減少し、腫瘍の増殖が抑制できることが明らかとなった。以上の結果から、mir-125bは腫瘍血管形成において血管の発芽を促進させる「引き金」として機能していることが明らかとなり、その成果はoncogene誌にて発表した。
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