研究課題/領域番号 |
23701062
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
王 宇清 鹿児島大学, 産学官連携推進センター, プロジェクト研究員 (20505143)
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キーワード | 腫瘍生物学 / 癌幹細胞 / 遺伝子治療 / アデノウイルスベクター / 国際研究者交流 |
研究概要 |
本研究の目的は、治療抵抗性の原因となる癌幹細胞を標的として、同定・診断・治療可能な増殖制御型アデノウイルスベクターを構築、検証するものであって、本課題は以下の3点について明らかにする予定。① 癌幹細胞の表面マーカーと報告されたCD133が真の癌幹細胞マーカーであることの確認。② 癌幹細胞の細胞学的・遺伝子学的特徴の解明。③ 癌幹細胞に標的治療する増殖制御型アデノウイルスベクター(CD133反応性m-CRA)の構築と検証。 平成23年度から研究計画通りに以下のことを進めてきた。① CD133の発現に制御するプロモーター活性を解析するため、五つのプロモーターをクローニングし、非増殖型アデノウイルスベクターに組み込むことができた。② それを用いて、CD133高発現する消化器癌細胞株と臨床グリオブラストーマから浮遊細胞塊形成法で濃縮してきた神経癌幹細胞におけるCD133プロモーターの制御活性を解析し、癌細胞より癌幹細胞にはCD133のプロモーター活性が顕著に高いと示された。③ CD133遺伝子発現癌幹細胞をターゲッティングする増殖型アデノウイルスベクター(CD133反応性m-CRA)を構築した。④ CD133反応性m-CRAを用いて、各種のCD133発現する癌細胞株と癌幹細胞に感染し、in vitroの治療効果を検証できた。CD133発現癌細胞株と癌幹細胞にCD133反応性m-CRAは有意な癌細胞と癌幹細胞の殺傷効果が示された。一方、正常細胞にCD133反応性m-CRAの毒性が見られなくて、in vitroの安全性も示された。⑤ さらに、NOD-SCID免疫不全マウスを用いて、癌幹細胞の腫瘍形成能を確認し、ex vivoの実験でCD133反応性m-CRAの腫瘍抑制作用の検証実験を進めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は癌幹細胞を標的治療する増殖制御型アデノウイルス(CD133反応性m-CRA)の構築と治療効果の検証を行い、それによって、固体癌の癌幹細胞表面マーカーCD133は真の癌幹細胞のマーカーであることと、癌幹細胞の細胞学的・遺伝子学的特徴を明らかにするという3つの目的の達成を目指す。 研究の進行は以下の通りに進めてきた。平成23年度 ① CD133の発現に制御するプロモーターの活性解析を行うため、クローニングしたCD133の5種類のプロモーターをまず非増殖型アデノウイルスベクターに組み込むことができた。② それを用いて、CD133高発現する消化器癌細胞株と臨床グリオブラストーマから浮遊細胞塊形成法(Sphere法)で濃縮してきた神経癌幹細胞におけるCD133プロモーターの制御活性を解析した。がん細胞より癌幹細胞にはCD133のプロモーター活性が顕著に高いと示す。平成24年度 ① CD133遺伝子発現癌幹細胞をターゲッティングする増殖型アデノウイルスベクター(CD133反応性m-CRA)を構築した。② CD133反応性m-CRAを用いて、各種のCD133発現する癌細胞株と癌幹細胞に感染し、in vitro治療法を検証した。CD133発現癌細胞株とCD133発現する癌幹細胞にCD133反応性m-CRAは有意な癌細胞と癌幹細胞の殺傷効果が示された。③ 一方、正常細胞にCD133反応性m-CRAの毒性が見られなくて、in vitroの安全性が示された。平成25年度 動物レベルの検証に入り、NOD-SCID免疫不全マウスを用いて、癌幹細胞の腫瘍形成能を確認し、ex vivoの実験でCD133反応性m-CRAの腫瘍抑制作用の検証実験を行った。平成26年度、ex vivoの実験を継続に進めて行く予定。
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今後の研究の推進方策 |
本研究癌幹細胞を標的治療する増殖制御型アデノウイルス(CD133反応性m-CRA)の構築と検証を行い、それによって、固体癌の癌幹細胞表面マーカーCD133は真の癌幹細胞のマーカーであることと、癌幹細胞の細胞学的・遺伝子学的特徴を明らかにすることなので、これから継続にいくつの癌幹細胞にCD133反応性m-CRAのin vitro殺傷効果とin vivoの治療効果の検証を進めていく予定。 具体的に以下の研究を継続していく予定。 ① CD133反応性m-CRAのin vitro治療法の検証について、さらに、各種の癌細胞株と癌幹細胞のCD133(+)分画とCD133(-)分画の間で、in vitroでFlow Cytometry解析とWST assayなどの生存細胞解析方法でCD133(+)細胞特異的と癌幹細胞の標的の治療効果を検証する。② 上記①のCD133反応性m-CRAのin vivo治療効果の検証。③ 本研究室開発したm-CRAの作製法で、治療遺伝子(P2)の部分(作製法は本研究計画書に参考)にCD133反応性m-CRAのP2の部分にあるEGFPによりCD133(+)癌細胞と癌幹細胞を殺す以外は、治療経過の可視化も可能となり、それについての検証も行う予定である。④ ex vivoとin vivoで多種類のm-CRAの治療効果を比べる。 本課題「癌幹細胞を標的として同定・診断・治療可能な増殖制御型アデノウイルスベクターの構築と検証」については、平成25年度まで研究計画通りに進めてきて、実験材料や実験条件、技術の準備は整っており、平成26年度は既に始まっている上記の動物実験について、継続的に検証していく予定。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究の進展に伴い、研究計画書通りに作成したCD133.m-CRAの癌幹細胞への治療効果は、さらにex vivoとin vivoで多種類のm-CRAと比べるために、研究計画を変更することになった。 本研究継続していくため、未使用額はex vivoとin vivoの動物実験の免疫不全マウスの購入、細胞培養、解析用試薬、国内と国際学会発表用交通費、宿泊費、論文投稿に関する印刷費、英文校正費などの費用に使用する予定。
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