研究課題/領域番号 |
23701063
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
谷口 博昭 東京大学, 医科学研究所, 特任助教 (90563289)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | ヒストンメチル化酵素 / EZH2遺伝子 / KLF2遺伝子 / 癌幹細胞 |
研究概要 |
具体的内容:幹細胞の維持に関与するヒストンメチル化酵素(HMT)に着目し、同酵素の標的遺伝子の同定、および、がん幹細胞に認められる形質の観点から、標的遺伝子の分子機構を解明することを目的として研究を推進した。その結果、(1)HMTであるEZH2遺伝子産物に対するChIP on ChIP法、さらに、EZH2遺伝子産物の阻害剤やEZH2遺伝子に対するRNA干渉を利用し、新規標的遺伝子であるKLF2を同定できた。また、(2)KLF2遺伝子の腫瘍におけるin vitroおよびin vivoの機能解析を行い、KLF2が腫瘍形成能、転移能に影響を及ぼすことが判明した。KLF2遺伝子の発現を乳癌、前立腺癌の臨床検体で評価し、腫瘍マーカーへの応用が可能である根拠が得られた。以上の結果の一部を、論文成果として報告した(Oncogene 2011)。以上の結果から、KLF2遺伝子が癌治療の標的分子に成り得る確信が得られた。また、KLF2遺伝子の癌幹細胞形質に及ぼす影響は、有望なプレリミナリーな結果を得ている。現在、KLF2遺伝子の発現を誘導する低分子化合物のスクリーニングを目的に、レポータアッセイを基本としたハイスループットスクリーニング系の構築に着手している。意義、重要性:EZH2遺伝子は転移・再発現象に関与する癌幹細胞の存在に深く関わる。従って、腫瘍におけるEZH2-標的遺伝子-腫瘍形質の新規経路を解明することは、腫瘍の転移・再発の克服に繋がる。今回、我々はEZH2の下流にある新規標的遺伝子KLF2を同定した。また、KLF2は独立した予後因子であり、新規腫瘍マーカーとしての利用が可能である。さらに、細胞の恒常性に関与するEZH2の直接阻害は癌治療において副作用を生じるが、正常細胞で発現を認めるKLF2を誘導する癌の治療法は副作用が軽減される可能性が高い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の計画である、(1)ヒストンメチル化酵素(HMT)であるEZH2遺伝子産物の標的となる新規遺伝子の同定(KLF2)、(2)EZH2遺伝子産物の新規標的遺伝子であるKLF2遺伝子の臨床症例での発現解析、(3)新規標的遺伝子KLF2の機能解析(in vitro, in vivo)、に関して目標としていた成果をほぼ得ることができており、その一部に関しては、国際誌に投稿し受理されている。(3)の一部(癌幹細胞形質との関連性)に関して、すでにフローサイトメトリーによる基礎データが得ているが、さらに、in vitro, in vivoを含めた実験によりデータを再検証している最中である。
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今後の研究の推進方策 |
KLF2遺伝子産物と癌幹細胞形質との関連性に関して、フローサイトメトリーによる基礎データ、さらに、in vitro, in vivoを含めた実験によりデータの検証を進める。また、当初より平成24年度課題としている、治療に伴う副作用の軽減を目的に、EZH2の標的遺伝子産物であるKLF2遺伝子の発現を誘導する新規薬剤候補の検索、を計画通り遂行する予定である。具体的には、レポータアッセイベースのハイスループットスクリーニング系の構築に着手している。その結果で得られた有望な候補薬剤に関しては、腫瘍細胞株を用いて、in vitroでの評価、xenograftと転移モデルによりin vivoでの評価を実施する計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度に使用する予定の研究費はありません。
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