研究概要 |
小胞体ストレス応答(unfolded protein response; UPR)は、低酸素・低栄養等の腫瘍微小環境における細胞の適応応答のひとつであり、細胞のストレス耐性と生存に寄与し、がんの悪性化や抗がん剤耐性の一因となっている。近年、UPRを抑制する化合物による抗腫瘍効果が報告され、UPRは治療の新しい分子標的として期待されている。しかし、UPRの阻害が、がん細胞及びがん間質細胞を含めた腫瘍微小環境にどのように影響しているのかは明らかになっていない。本研究では、生体内で腫瘍微小環境におけるUPR阻害の影響を明らかにすることを目的とし、平成23年度には、UPRの活性化及びストレス領域を検出するin vivo実験系の構築を行った。1)腫瘍移植マウスモデルの検討:C57BL/6にLewis肺がん由来3LL細胞及び胸腺腫由来EG7細胞を皮下移植し、移植細胞数及び腫瘍の増殖速度を検討した。腫瘍におけるUPRマーカー遺伝子GRP78の発現上昇、転写因子XBP1のスプライシングを定量PCRにより解析し、UPRの活性化が起こっていることを確認した。また、flow cytometryにより、腫瘍内にCD45, CD11b, CD4, CD8, Gr-1, Ly6C等の表面マーカーを発現する多数の免疫細胞が浸潤していることが明らかになった。2)UPRの活性化を検出するレポーターシステムの構築:XBP1遺伝子の小胞体ストレス特異的スプライシング部位の下流にGFP及びルシフェラーゼ遺伝子を融合したレポーター遺伝子を作成し、ツニカマイシン、タプシガルジン等によるUPR誘導条件下で活性化を検出できることを確認した。これらの安定発現株を作成するため、レンチウイルスによる遺伝子導入系を立ち上げ、3LL, EG7細胞にレポーター遺伝子を導入し、移植後の増殖を確認した。
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