研究課題/領域番号 |
23701070
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研究機関 | 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(共通施設) |
研究代表者 |
宮川 信一 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(共通施設), 岡崎統合バイオサイエンスセンター, 助教 (30404354)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 女性ホルモン / Wnt / 女性生殖器 |
研究概要 |
女性ホルモン(エストロゲン)は生体の恒常性維持、生殖、発生・分化をはじめとした様々な局面で重要な機能を果たしている。それゆえ女性ホルモンシステムの破綻は、乳がんや子宮癌、不妊、骨粗しょう症や肥満などを引き起こし、生物の様々な活動に影響を及ぼす。こうしたホルモン関連の疾患の増加は近年社会問題化しているが、その発症メカニズムは不明な点が多い。さらに近年では、内分泌かく乱物質の発生期における影響として、晩発性あるいは継世代性の影響が示唆されてきている。成熟した動物への影響はホメオスタシスに基づいた応答により長期的な影響を示さないが、未成熟な発生途上の動物に対する長期的かつ不可逆的な応答はほとんど理解が進んでいない。未成熟な発生途上の動物に対する長期的かつ不可逆的な応答について、女性生殖管をモデルとして、女性ホルモンと、その作用をメディエイトするシグナル因子の候補としてのWntシグナルとのクロストークの解析を行った。β-cateninを構成的に活性化させた遺伝子改変マウスの膣上皮細胞において、女性ホルモン作用非依存の細胞増殖が誘導されることが明らかとなった。さらに周生期DES投与マウスの膣上皮の基底細胞の一部や腺様疾患部でもβ-カテニンは高発現し、蓄積していることが分かった。以上の結果から、発生期女性ホルモン曝露によるホルモン応答システム破綻時において、Wnt/β-カテニン経路の関与が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は当初の計画とおり、女性生殖器官に対する女性ホルモンとWntシグナルとのクロストーク作用について、遺伝子改変マウスの表現型解析を中心に行い、成果を出しつつある。一方エピジェネティクス解析も開始しており、おおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
上の自己評価の通り本研究はおおむね順調に進展しており、当初の計画に沿って研究を推進する予定である。すなわち、遺伝子改変マウスの表現型解析をさらにすすめ、またエピジェネティクス解析についても、標的となる遺伝子を選定し、詳細にDNAメチル化、ヒストン修飾などの変化を詰めていく。これらの結果を総合して組織・個体レベルでのホルモン応答システムのメカニズムの理解とその破綻のメカニズムの分子生物学的基盤を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の計画とおり、分子生物学研究のための試薬(酵素など)、組織化学用試薬(抗体や、免疫組織化学用のキット)やプラスチック消耗品、さらに実験動物飼育、購入代に使用する。必要な機器等は研究室で確保しており、必要時に利用できるため、機器等の購入はない。
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