1.可溶型CD155による癌免疫逃避機構の解明:前年度に作製した可溶型CD155産生MethA細胞を用いて解析を行った。MethA特異的CTLを誘導し、in vitroにて可溶型CD155産生MethA細胞に対する細胞傷害活性の解析を行ったところ、Mock-MethA細胞に対するよりも有意に細胞傷害活性が低かった。この結果は前年度に行ったin vivo解析つまり可溶型CD155産生MethA細胞を移植した野生型マウスはMock-MethA細胞を移植したマウスより生存率が低いという結果を支持している。 2.可溶型CD155を標的とした新規分子標的治療法の検討:(1)可溶型CD155産生MethA細胞が産生する可溶型CD155はFLAG蛋白付きであることを利用し、抗FLAG抗体を用いて可溶型CD155を標的としたマウス治療モデルの樹立に取り組んだが難渋した。引き続き検討する。(2)抗ヒト可溶型CD155特異的抗体の作製に取り組み、ヒト可溶型CD155蛋白を抗原としてマウスに免疫したが可溶型特異的抗体は得られなかった。引き続き可溶型に特異的な蛋白を抗原とし抗体作成に取り組む。 3.可溶型CD155の新規腫瘍マーカーとしての有用性の検討:(1)手術により採取された婦人科癌組織約15症例を用いてCD155遺伝子の発現を解析し、全例において膜型・可溶型CD155の発現を認めた。(2)前年度は婦人科癌、乳癌、肺癌、消化器癌、血液がん等の癌患者血清約200例を用いて可溶型CD155濃度を解析し、健常人と比較して可溶型CD155濃度が有意に高いという結果を得た。また癌患者血清の治療前後の可溶型CD155濃度を比較し、治療後に有意に低下するという結果を得た。今年度は症例数の少なかった消化器癌を約100例追加解析し、更なる有意差を得ることができた。この結果は可溶型CD155が腫瘍マーカーとして有用であることを示唆している。
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