がん病態の成立にはがん細胞自身のみならずその微小環境における様々な宿主細胞との相互作用が非常に重要な役割を果たしている。本研究課題では腫瘍免疫監視機構において重要な役割を担うNK細胞の腫瘍微小環境におけるホメオスタシスと機能解析を行うことを目的とした。本年度はNK細胞の重要なエフェクター分子であるTRAILについて、TRAILを介した抗腫瘍免疫応答を増強することが可能となり得る天然物由来成分の探索と抗がん効果の増強について報告した。いっぽうでTRAILが抗腫瘍免疫応答のみならず、がん細胞の炎症性シグナルを活性化する事によってがん転移を促進する可能性についても報告した。これまでの研究成果ではNK細胞エフェクター分子としてIFN-γの抗転移エフェクター機序における重要性について示した。また腫瘍微小環境へのNK細胞集積について解析を行い、そのメカニズムについて検証した。腫瘍内浸潤NK細胞としてCD27hi NK細胞サブセットが選択的に集積していた。また腫瘍に集積したCD27hiNK細胞は早期にIFN-γを腫瘍局所で産生する細胞である事、腫瘍へのNK細胞集積においてIFN-γが重要な役割を担う事を示した。すなわちNK細胞の腫瘍微小環境における機能は主にCD27hiサブセットによって発揮されIFN-γが重要な分子として機能しているが、一方でNK細胞の重要なエフェクター分子であるTRAILは炎症性シグナルの活性化をはじめとするがん悪性化を助けるような働きをしていることも明らかになって来た。これらの結果は腫瘍微小環境の複雑さの一端を示しており非常に重要な結果である。
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