研究課題/領域番号 |
23701076
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
井上 浄 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00433714)
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キーワード | COX-2 / tumor / dendritic cell / liposome |
研究概要 |
腫瘍組織におけるcyclooxygenase (COX)-2発現は免疫抑制に大きく関わることが報告されており、これまでの申請者の研究から、腫瘍以外にも腫瘍に浸潤するCD11c+細胞に高いCOX-2発現が認められた。そこで本研究では、腫瘍に浸潤するCOX-2+CD11c+細胞の特徴を明らかにするため、平成24年度は以下の検討を行い新たな事実を明らかにした。 作製したliposomeによるCOX-2+CD11c+細胞の機能変化の検討:平成23年度の研究で作製したliposomeをラベルし担癌マウスに投与したところ、COX-2+CD11c+細胞に選択的に取り込まれていることが確認された。COX-2選択的阻害剤を封入したliposome(iCOX-liposome)を担癌マウスに投与し、その後腫瘍組織からCD11c+細胞採取した後、以下に示す検討を行った。 1. CD11c+細胞が発現する細胞表面分子の検討:腫瘍組織から採取したCD11c+細胞は、未熟樹状細胞の特徴と類似していたが、iCOX-liposome投与群では、CD80やCD86に代表される補助刺激分子の発現上昇が認められた。 2. CD11c+細胞が産生する液性因子の定量:腫瘍組織から採取したCD11c+細胞の培養上清中にはPGE2やTGF-β、IL-10などといった免疫抑制性のサイトカイン等が認められたのに対し、iCOX-liposome投与群では、その産生は極めて低下していた。 3. CD11c+細胞が産生する液性因子による免疫細胞の活性化阻害効果の検討:腫瘍組織から採取したCD11c+細胞の培養上清は、in vitroにおけるCD4T細胞、CD8T細胞、 NK細胞およびNKT細胞の活性化を抑制するのに対し、iCOX-liposome投与群の培養上清は、CD8T細胞およびNK細胞の活性化を抑制しないことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
交付申請書に記載した「研究の目的」は、前述の研究実績の概要にも記した通り、計画していたすべての項目において、おおむね順調に結果を得ている。しかしながら、平成24年度の研究計画の“種々の担癌マウスにおけるliposomeの効果”については、京都大学への異動と重なり、異動先(京都大学)での実験立ち上げに時間がかかり、当初の計画よりも遅れてしまったため、平成25年度への延長申請を行った。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の成果を踏まえ、様々な種類の腫瘍細胞および化学発がん物質で誘導した担癌マウスを用いて、作製したliposomeの効果を検討し、新規免疫療法の開発を行う。 種々の担癌マウスで、作製したliposomeの効果を検討:EL-4、B16、colon26、4T1等の腫瘍細胞株を接種した担癌マウス、もしくは3-Methylcholanthreneにより誘導した担癌マウスに、本研究で新たに作製したiCOX-liposomeを投与し、腫瘍体積の変化を測定することでその効果を評価する。またliposome投与群と非投与群の腫瘍浸潤リンパ球を採取し、CTLの誘導やTh1、Treg、Th17、γδT細胞等変化をフローサイトメーターによって解析することによって、COX-2+CD11c+細胞が腫瘍免疫に及ぼす影響を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は主にin vivoにおける解析が中心となるため、平成24年度から繰り越した研究費のうち、実験用動物の費用を多く見積もっている。またin vivoの評価においても、抗体等の研究試薬を多く使用するため、消耗品を中心とした概算となっている。 また、本研究成果の学会発表や研究会への参加により、より多くの知見等を収集し本研究の推進に役立てるため、旅費を見積もっている。さらに、本研究を論文発表するための費用としても使用する計画である。
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