研究概要 |
前年度までの研究では、悪性リンパ腫(主にNK/T 細胞リンパ腫)においてmicroRNA-150の発現が著しく低下していることを見出し、がん抑制的miRNAとしてアポトーシス誘導、細胞周期抑制、および細胞老化(Senescence)を誘導しがん細胞抑制を来すことを報告した(Leukemia, 2011)。本年度は、マウスモデルを用いてT細胞リンパ腫に対するmiR-150の腫瘍抑制効果について検討を行った。これらのサブタイプにおいても、miR-150は正常対応Tリンパ球と比較して発現が著しく低下している。In vivoでのmiR-150の腫瘍抑制効果を検討する為にT細胞リンパ腫細胞株であるATN-1, Myla細胞株にmiR-150を恒常的発現をさせたのちに、免疫不全マウス(NOGマウス)に移植した。「GFPのみを導入した細胞株を移植した腫瘍径」と「GFP-miR-150を導入した細胞株を移植した腫瘍径」を比較するとmiR-150導入細胞株を移植したNOGマウスでは著しく腫瘍径が小さく腫瘍増殖が抑制効果が示唆された。興味深いことに、MyLa細胞株ではGFP移植マウスでは骨髄、脾臓に著しい臓器浸潤をきたし早期(20-30日)で死亡するが、miR150を移植したマウスでは臓器浸潤の抑制が見られ、生存は有意に延長(60-100日)した。miR-150はAKT2,DKC1を直接標的とし制御することはすでに報告しているが、網羅的遺伝子発現解析を行い臓器浸潤に関わる遺伝子についても解析を行っている。miR-150は、成熟リンパ球すべてのサブタイプで恒常的に発現していることから、この小さな制御性RNAは新たな治療分子としての有力な候補となる可能性をもっていると考えられる。今回の結果を踏まえさらに他の造血器腫瘍を対象とした解析を進めていく予定である。
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