研究概要 |
悪性リンパ腫(ML)は寛解,再燃を繰り返す特徴があり、開始した治療が適切か否かの判断が早い時期にできれば,治療効果不十分が予想される症例では治療方法の変更を早期にでき、予後を改善できる可能性がある。形態情報に加えて機能情報を得られるFDG PET-CT診断の役割が期待されているが、組織型の特徴や治療に合併する炎症などの影響によりFDG PET診断能には限界がある。 1)大阪大学大学院医学系研究科附属PET分子イメージングセンターに新しく設置された小動物実験用システムInveon PETシステムの調整や整備を行い、小動物への各代謝トレーサの最適な投与量、投与後のPET-CTの最適撮像開始時間および撮像時間の決定に努めた。同時に並行して、ヒトのML細胞株(CD20陽性B細胞)を培養して、ヌードマウスの皮下に投与し、腫瘍モデルを作成した。腫瘍直径が15mmの時点で、FDGを静注し、治療前のPET-CTとPET-MRIを撮像した。治療前PETでは、腫瘍部の辺縁はFDG高集積を示し、中心は相対的に集積低下を示す像が得られ、辺縁部に増殖能や活性がより高いML細胞が存在する可能性が示唆された。撮像終了後に、分子標的治療薬のリツキサンを投与した。現在、治療後の効果判定の画像や病理組織学的変化の解析を行っているところである。 2)ML患者の糖代謝を反映するFDG PET/PET-CT診断のデータ解析を行い、従来法のCT/MRIの形態評価とPETの機能評価とを比較した。従来法と比べ、治療後のFDG PET/PET-CTの診断能や予後予測が優れることが判明したが、FDG PET診断能の限界があることもわかった。また、アミノ酸代謝を反映するメチオニン(MET)を用いて健常成人のMET-PETの解析を行い、健常データベースを作成した。今後患者のMET検査に応用していく予定である。
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