研究概要 |
本研究では、(1)がん関連タンパク質に特化した安定同位体標識タンパク質ライブラリー(OncoSIRPL)を新たに構築し、(2)ライブラリータンパク質を内部標準に用いた独自の高感度質量分析システムを確立することを目的とする。平成24年度は、前年度に引き続きコムギ無細胞合成系を用いて安定同位体標識タンパク質の合成とライブラリー化をおこなった。またライブラリー化が終了した安定同位体標識タンパク質の質量分析情報を用いて、絶対定量プロテオーム解析に向けたMRMアッセイシステムを構築した。安定同位体標識タンパク質のトリプシン消化物を対象としてMRM解析をおこない、設定したMRMチャネルの有効性を検証した結果、現在までに1,000種類以上のトリプシン消化ペプチドに関するMRMトランジション情報を取得することに成功している。また質量分析計のフロントLCによるペプチド分離作業を高速化するために、高圧型LCシステムと高速分離用カラムカートリッジを導入し、従来の4倍の流速(1,200nl/min)によるハイスループットMRM解析にも成功している。現在、スループット化したMRMシステムと内部標準ライブラリーを用いて、尿および血清試料を対象とした絶対定量プロテオーム解析を進めており、微量タンパク質成分(ng/mlレベル)の高感度検出に成功している。さらなる高感度化を目的として、ヒト体液試料中に含まれる主要タンパク質成分の抗体カラムによる除去処理を現在検討している。
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