研究課題/領域番号 |
23701086
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
木村 弥生 横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科, 特任助教 (80391936)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | リン酸化 / プロテオミクス / イムノブロット分析 / 電気泳動 / がん |
研究概要 |
本年度は、Phos-tagリガンドを用いたPhos-tag親和性電気泳動法を活用し、リン酸化修飾によるヒトプロテアソームサブユニットの質的変動をモニタリングするシステムの構築を目指した。プロテアソームは、14種類のサブユニットで構成される20Sプロテアソーム(20S)の両側または片側に少なくとも19種類のサブユニットで構成される19S調節因子(19S)が会合しており、この会合にはリン酸化修飾が関与すると考えられている。無処理および脱リン酸化処理したプロテアソームを非変性電気泳動法で分離した結果、本研究で用いた精製ヒトプロテアソームは20Sと19Sが会合し、リン酸化状態を維持していることが確認できた。次に、無処理および脱リン酸化処理したプロテアソームサブユニットを、異なる蛍光試薬で標識し混合後、Phos-tag親和性電気泳動法により分離した結果、それぞれに特徴的なバンドを検出することができ、Phos-tag親和性電気泳動法は、リン酸化修飾状態の違いによりプロテアソームサブユニットを分離できる有用な方法であることが明らかとなった。さらに、入手可能であり抗体価の高い24種類のサブユニットに対する抗体を用いたイムノブロット分析により、12種類のサブユニットでPhos-tag親和性電気泳動法によりリン酸化修飾状態が異なると思われる分子を検出できることがわかった。その中から、4種類のサブユニットについて、二次元Phos-tag親和性電気泳動(固定化等電点電気泳動/ Phos-tag親和性電気泳動)法による分離を行ったところ、2種類のサブユニットでリン酸化修飾状態が異なると思われる分子を分離・検出することに成功した。以上の結果から、Phos-tag親和性電気泳動法を活用することで、2種類のサブユニットについて、リン酸化修飾による質的変動をモニタリングすることが可能になったと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
リン酸酸化状態を維持したままヒトプロテアソームを調製することに成功した。また、各サブユニットに対する抗体を用いたイムノブロット分析と一次元および二次元Phos-tag親和性電気泳動法を活用することで、2種類のサブユニットについて、リン酸化修飾状態が異なると思われる分子を分離・検出することに成功した。これにより、今後、これら2種類のサブユニットについて、質的変動をモニタリングすることが可能になったと考えられる。その一方で、質量分析装置を利用したペプチド分析による、これらサブユニットの修飾部位の特定については、未だ成功には至っていない。そのため、各サブユニットの質的変動が、どのアミノ酸の修飾に由来するかを具体的に示すことができない。
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今後の研究の推進方策 |
本年度、分離・検出に成功したサブユニットのリン酸化修飾分子について、質量分析装置を利用したペプチド分析により修飾部位の特定を行うと共に、リン酸化による機能差異ヒトプロテアソームおよび各種がん細胞中のヒトプロテアソームの質的な変動を調べる。また、試料調製方法の検討や一次元および二次元Phos-tag親和性電気泳動法の検討を行い、他のサブユニットについても、引き続きリン酸化修飾状態の異なる分子の分離・検出方法の確立を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
リン酸化修飾部位特定のため、質量分析装置を用いたペプチド分析に必要な消耗品費に使用する。さらに、試料調製のための消耗品費ならびにリン酸化修飾分子の分離・検出のためのPhos-tag親和性電気泳動およびイムノブロット分析に必要な消耗品費に使用する。
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