研究概要 |
本研究課題では、1分子蛍光分析という新たなアプローチでのゲノムワイドなDNAメチル化度決定法(SMMA:Single Molecule Methylation Assay)を構築し、臨床サンプルを用いて、SMMAによって疾病発症とメチル化の関係、脱メチル化薬の効果予測が可能かを検証し、医療応用を目指す。 初年度において、SMMA法の確立を行い、さらに、健常人および骨髄異形成症候群 (MDS) 患者の末梢血から採取したDNAを用いて、SMMA法にてDNAメチル化度の比較を行った結果、脱メチル化薬(5-アザシチジン, 5-azaC)を投与後のMDS患者においてSMMA indexが著減した。 これらの結果を踏まえて、最終年度である平成24年度では、SMMA法の臨床現場での利用を目指して「脱メチル化薬の効果予測」を行った。5-azaCは5~7日間投薬、3週間休薬というスケジュールで数クールにわたって治療が行われる。よって、1) 治療前、2) 治療後(投与後5~7日目)、3) 休薬中という3ポイントでサンプリングし、繰り返しSMMA indexを測定した。さらに、MDS患者におけるSMMA index変化の原因となる末梢血細胞の由来を明らかにするため、末梢血中のリンパ球および顆粒球を分離し、それぞれの分画由来のDNAを用いてSMMA indexの比較を行った。上記の条件でMDS患者22例で検討した結果、末梢血の顆粒球分画が特徴的なゲノムワイドの低メチル化を示し、これらが5-azaCの投与により変化し、治療抵抗性との関連が示唆された。このことより、SMMA法によるゲノム全体のメチル化度の測定は5-azaC治療の分子マーカーとなりうる可能性がある。今回の検討で全血と顆粒球分画の結果がほぼ相関することより、実用化に際しては全血で「簡便」に測定することも可能であると考えられる。
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