研究課題/領域番号 |
23701088
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
吉澤 成一郎 東京医科大学, 医学部, 助教 (70421063)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 非ホジキンリンパ腫 / miR-92a / 血清miRNA / 診断マーカー |
研究概要 |
本研究課題では非ホジキンリンパ腫における血清miRNAの変動について、患者および健常人の血清を用いて定量PCR法で解析し、リンパ腫の診断や予後予測への臨床応用、さらには、その発現異常の機序について明らかにすることが目的である。初年度は血清miR-92aの定量系(内部標準、外部標準を用いた標準化)を確立した。さらに、リンパ腫患者試料(学内倫理委員会で承認済み)を用いて血清miR-92aの定量を行い、臨床病態との関係を解析した。リンパ腫患者の末梢血由来細胞内miRNAを測定するときはsmall RNAであるU6Bをリファレンスとし、一方でリンパ腫患者血清内miRNAを測定する時はmiR-638をリファレンスとして、miR-92a発現の相対定量を行った。その結果、患者血清中でmiR-92aが極端に低下していることを明らかにし、組織別、臨床病期別、染色体異常、病期(診断、寛解、再発時)における血清miR-92aの変動を詳しく解析したところ、診断時で著しく低下した血清中miR-92aの発現レベルは、寛解時に健常人と同レベルまで回復し、さらに再発時には診断時と同様の発現低下が見られた。以上の研究結果は、PLoS One. 2011 (6(2):e16408)にpublishされた。臨床の場において、少量の血液サンプルのみで可能な非侵襲的な方法として診断活用できれば、従来のバイオマーカーより力強いツールとなると考えている。さらには、患者の治療の選択の幅が広がり、生活の質の改善も望めるものと思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の計画に沿って研究を実施し、非ホジキンリンパ腫患者および健常人における血清miR-92aの変化について検証し、さらには組織亜型、臨床病期、予後因子別からみた血清miR-92aに違いがあるのかを明らかにし、論文発表、学会発表を行った。次年度に向けて、リンパ腫組織内で高発現しているmiR-92aがなぜ血清中では低下するのかについて、miR-92aの取り込み機構に着目し、そのメカニズムについて明らかにするための系も構築中である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、リンパ腫組織内で高発現しているmiR-92aがなぜ血清中では低下するのかについて、そのメカニズムについて明らかにすることを目的とし、リンパ腫細胞株を用いてmiR-92aの過剰発現およびノックダウンを行い、リンパ系腫瘍細胞におけるmiR-92aの役割を解析する。市販のPre-miR miRNA precursor(AM17100)をリポフェクションし、過剰発現細胞を得る。発現抑制にはanti-miR-92a inhibitor(AM10916)を用いる。それぞれの状態の細胞を回収し、細胞増殖との関係、アポトーシスとの関係を解する。なおアポトーシスの評価はAnnexin V陽性細胞の変化およびCaspase-Glo 3/7 assay (Promega)を用いて行う。網羅的遺伝子発現解析には384-wellカード型アレイ(TaqMan Gene Signature Array)を用いる。ABI 7900HT real-time PCRを利用し、同時にデータベースよりin silicoでの標的遺伝子検索を行う。このことによりmiR-92aのリンパ腫細胞における役割とmiR-92aが制御するシグナル伝達経路が明らかになる。
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次年度の研究費の使用計画 |
リンパ腫組織内で高発現しているmiR-92aがなぜ血清中では低下するのかについて、miR-92aの取り込み機構に着目し、そのメカニズムについて明らかにすることを目的するため、分子生物学系の研究試薬に加え、細胞培養関連し薬および小器具類の購入に使用する予定である。さらに、国内外の学会発表にかかわる旅費としての使用を予定している。
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