子宮内膜癌の若年女性への発生が増加しており、子宮温存可能な子宮内膜癌の治療の開発が求められている。子宮内膜癌において、HER2発現が、細胞内のシグナル伝達にどのように関わり、また、抗がん剤感受性、ホルモン療法、予後に影響しているのかについて検討し、分子標的治療薬の役割について検討することを目的とした。 in vitro系で、子宮内膜上皮不死化細胞(EM-E6/E7/TERT cell)、子宮内膜癌細胞株(Ishikawa cell、HEC1A cell)において、siRNAを用いてモデルを作成した。HER2抑制系では、ウエスタンブロット法にて、p-AKT の発現低下を認めたが、FOXO1Aの発現の変化は有意には認められなかった。MPAや抗癌剤(PTX、CDDP等)への感受性について、cell count およびWST-1 assayにて検討すると、HER2の抑制系でのMPAや抗癌剤の感受性は軽度増加した。また、Trastuzumabは、単独では上記細胞株において有意な増殖抑制効果は認められなかったが、PTXの低用量使用下では増強効果が認められた。以上から、子宮内膜癌において、HER2が、MPAや抗癌剤の感受性にからむ可能性、およびHER2をターゲットとした分子標的薬の有効性を推測できた。 in vivo系では、子宮内膜癌の検体で、HER2、p-AKT、FOXO1A、p-mTORの発現を免疫組織染色により検討した。HER2発現は、優位な予後不良因子であった。また、HER2発現はp-AKT発現とは相関が認められなかったが、p-mTOR発現と負の相関が認められた。さらに、p-mTOR発現は、PTEN遺伝子変異とに有意に相関が認められた。 今後は、子宮内膜癌1a期G1の症例をさらに集積して、HER2発現、p-mTOR発現、PTEN遺伝子変異について解析していく予定である。
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