研究課題/領域番号 |
23701104
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
秋山 弘匡 東京理科大学, 基礎工学部, 助教 (40400254)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 分子標的治療 / 抗癌剤 |
研究概要 |
(1) 現有している種々の癌細胞に対してaralinの感受性とaralin受容体であるHDLBP発現量の相関関係を解析した。その結果、IC50が0.08 ng/mlと最もaralin感受性の高いHeLa細胞でプロセッシングによって生じた110 kDa HDLBPの発現量が最も高く、IC50 : 8.8 ng/mlのHepG2細胞でHDLBP発現量はHeLa細胞と比較し1/5に減少し、aralinに対して感受性を示さなかったHuh7細胞ではHDLBPの発現は検出限界以下であった。これらの結果より、aralin感受性とHDLBP発現量の相関関係が認められた。(2) HeLa細胞を用いHDLBP安定発現株と発現抑制株を樹立した。HDLBP発現抑制株においては、HDLBPの発現減少にともなってaralin感受性の減少が確認された。安定発現株においては、HDLBP発現量が増加してもaralin感受性は変化しなかった。これは、HDLBP安定発現株では完全長の150 kDa HDLBPを導入しただけでは、プロセッシングで生じる110 kDa HDLBPの発現量に変化が現れないことが示唆された。これらの結果より、細胞膜上の110 kDa HDLBPの量がaralinの抗腫瘍活性の本質となることが示された。(3) aralin添加時のHDLBPおよびaralinの細胞内局在変化をモニタリングする為、EGFP融合HDLBP安定発現HeLa細胞株を樹立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
HDLBPの発現量とaralin感受性の相関関係が明らかとなり、HDLBPがaralinの抗腫瘍活性の本質となることが示された。平成24年度の研究計画である、細胞内局在変化を検討するための、EGFP融合HDLBP安定発現HeLa細胞株を平成23年度中に樹立に成功した。平成23年度の研究計画である、NOD/SCIDマウスを用いた腫瘍形成能および転移能の解析は、今年度行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
HDLBPがaralin受容体として機能していることが示唆されたが、150 kDaの完全長HDLBPが、メカニズムは不明であるプロセッシング機構により110 kDaとなり、110 kDa HDLBPが細胞膜上に局在し受容体として機能する可能性が示唆された。よって、今後はHDLBPのプロセッシング機構の解明が必要であると考えられる。また、aralinはレクチン活性を有しており、癌細胞特異的糖鎖を認識していることが想定できる。HDLBPに付加された糖鎖の解析もaralinによる選択的な抗腫瘍活性を決定する上で重要な知見を提案すると考えられる。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、細胞培養とヌードマウスを用いた実験が主になる。その為、細胞培養関係の消耗品やヌードマウス購入費が必要となる。 旅費としては、研究成果発表のため、癌学会、生化学会や分子生物学会へ参加する。また、研究成果は、癌専門誌への掲載のため、研究成果発表費が必要となる。
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