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2011 年度 実施状況報告書

血行性転移に関わる血小板依存的ながん増殖機構の解明と阻害剤の創製

研究課題

研究課題/領域番号 23701107
研究機関公益財団法人がん研究会

研究代表者

高木 聡  公益財団法人がん研究会, がん化学療法センター基礎研究部, 研究員 (20582240)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2013-03-31
キーワード血行性転移 / 血小板
研究概要

本研究課題は、がんの根治を目指した新規治療法開発の為に、がんの血行性転移阻害剤の開発を行うことを目的とする。すなわち、血行性転移の際にがん細胞と血小板が形成する凝集塊を、がん細胞と血小板の共培養系で再現することで、凝集塊中における血小板依存的ながん細胞の増殖促進機構を明らかにする。本年度は、血小板と共培養したがん細胞が増殖能を亢進する分子機構を解明することに重点を置いて研究を行った。計画当初、血小板が無核であることに着目し、二本鎖DNA量を定量することで共培養条件下のがん細胞の増殖能を比較する予定であった。しかし、血小板単独で測定した場合にも強い蛍光シグナルを検出したため、検出方法の改善を試みた。具体的には、蛍光タンパク質(ZsGreen)を安定的に遺伝子導入したがん細胞株を樹立し、血小板との共培養条件下でZsGreenの蛍光強度を指標にがん細胞の増殖能を測定した。これにより、血小板由来のシグナルはバックグラウンドと同程度に改善されたため、以降はZsGreen発現がん細胞株を用いて検討した。まず、血小板との共培養で増殖能が亢進するがん腫を探索したところ、ある肉腫において顕著な増殖能の亢進が観察されたため、この肉腫由来の細胞株を主たる解析対象とした。次に、血小板と共培養した肉腫細胞株の細胞破砕液をリン酸化タンパク質検出アレイで解析することで、血小板依存的な細胞増殖シグナルを仲介する分子の同定を試みた。共培養開始2時間後にいくつかのシグナル伝達分子のリン酸化が観察された。そこで、個々の分子に関するリン酸化抗体を用いてウエスタンブロット法で確認したところ、血小板依存的なリン酸化を受けるシグナル伝達分子が同定された。現在、このシグナル伝達分子が血小板依存的な増殖能亢進に寄与する可能性を阻害剤やノックダウン実験で検討し、この分子の上流に位置するレセプター分子の同定に努めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は(1)血小板依存的な細胞増殖シグナルを仲介する分子の同定、および(2)同定されたシグナル伝達分子の遺伝子導入あるいはsiRNAを用いたノックダウン実験を研究計画に掲げた。(1)に関しては既に達成しており、いくつかの候補分子の同定に成功している。(2)に関しては、同定された分子に特異的阻害剤が存在していたためsiRNAの代わりに阻害剤を処理して解析を行った。遺伝子導入実験に関しても、発現ベクターの構築が完了している。以上より、おおむね順調に進展しているものと評価する。

今後の研究の推進方策

血小板依存的な細胞増殖シグナルを仲介する分子が同定されたことから、本現象の鍵となるシグナルカスケードが特定されつつある。しかし、シグナル伝達の最上流に位置するレセプター分子の同定には至っていないことから、レセプター分子を同定することを最優先課題として研究を推進する。具体的には、レセプター分子を多く含む抗体アレイを入手しているので、アレイを用いたリン酸化タンパク質解析を行うことで特定する。その後、同定されたレセプター分子の細胞外領域に対する抗体作製を行い、中和抗体をスクリーニングする。最終的に、作製された中和抗体の腫瘍増殖に与える影響を検討し、対象細胞がマウスに生着するようであればin vivo評価も行う。また、血小板共存下で顕著に細胞増殖が亢進したある肉腫に対する標準治療として化学療法剤が選択されているので、この化学療法剤誘導性の細胞死に与える血小板の影響も評価項目として検討する。

次年度の研究費の使用計画

次年度使用額の43万円は、年度をまたぐ形で開催された国際学会AACR Annual Meeting 2012(March 31-April 4)に参加し、研究成果報告を行うための外国旅費として繰り越した。翌年度以降に請求する研究費は、おおむね以下の用途に使用する予定である。本研究で必須となる種々の細胞株や大腸菌の培養に必要な10 cm dishやチューブ、ピペット、ピペットチップを購入するための培養用プラスチック器具費とする。通常の細胞培養に用いられる培地・FBS・トリプシン・グルタミン・PBSなどを購入するための細胞培養用試薬費とする。遺伝子組み換えに必須な制限酵素・ポリメラーゼ・プライマー・大腸菌培養用試薬を購入するために遺伝子・タンパク工学用試薬費とする。ゲル作製試薬・電気泳動・転写に用いるメタノールやSDS・グリシン・ニトロセルロースメンブレンを購入するための電気泳動用試薬費とする。組織免疫染色やウエスタンブロッティングを行うための市販抗体を購入するための抗体関連試薬費とする。ヌードマウスなどを業者から購入するための実験動物費とする。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] Prevention of hematogenous metastasis by neutralizing mice and its chimeric anti-Aggrus/podoplanin antibodies2011

    • 著者名/発表者名
      Nakazawa Y, Takagi S, Sato S, Oh-hara T, Koike S, Takami M, Arai H, Fujita N.
    • 雑誌名

      Cancer Science

      巻: 11 ページ: 2051-2057

    • DOI

      10.1111/j.1349-7006.2011.02058.x

    • 査読あり
  • [学会発表] Suppression of tumor metastasis by anti-Aggrus/podoplanin neutralizing antibodies2012

    • 著者名/発表者名
      Satoshi Takagi, Naoya Fujita
    • 学会等名
      The 16th Japanese Foundation for Cancer Research-International Symposium on Cancer Chemotherapy
    • 発表場所
      Tokyo
    • 年月日
      January 25, 2012
  • [学会発表] Prevention of hematogenous metastasis by mouse and murine/human chimeric anti-Aggrus/podoplanin antibodies2011

    • 著者名/発表者名
      高木 聡、藤田 直也
    • 学会等名
      平成23年度がん若手研究者ワークショップ
    • 発表場所
      蓼科
    • 年月日
      2011年9月2日
  • [学会発表] 抗Aggrus/podoplanin抗体による血行性転移の阻害2011

    • 著者名/発表者名
      高木 聡、藤田 直也
    • 学会等名
      第70回日本癌学会学術総会
    • 発表場所
      名古屋
    • 年月日
      2011年10月4日
  • [学会発表] 血小板凝集促進因子Aggrusを標的とした抗体による血行性転移の阻害2011

    • 著者名/発表者名
      高木聡、藤田直也
    • 学会等名
      第20回日本がん転移学会学術集会・総会
    • 発表場所
      浜松
    • 年月日
      20110630-0701

URL: 

公開日: 2013-07-10  

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