研究実績の概要 |
ラット骨髄細胞から樹状細胞への分化誘導を行い、得られた樹状細胞を用いて実験しました。まず樹状細胞上のMHCクラスIIと樹状細胞に特徴的な表面抗原(CD80, CD86, CD54, CD11)の発現レベルを測定しました。培養8日目ではCD54とCD11とMHCクラスIIの発現を認めましたが、ナイーブT細胞を活性化させる補助シグナル分子であるCD80とCD86の発現は低い状態でした。10日目ではこれらの発現を認めるようになり、他の表面抗原の発現レベルもさらに上昇していました。13日目は10日目と各種抗原の発現傾向は大きな差を認めませんでしたが、MHCクラスIIの発現がさらに上昇していました。以降の実験では、培養10日目の樹状細胞を使用しました。 次に樹状細胞の成熟化の度合を判別するために、細胞障害性T細胞への分化を誘導する分泌サイトカインである腫瘍壊死因子α(TNF-α)とインターロイキン12(IL-12)をELISA法で測定しました。腫瘍細胞は未感染・コントロールベクター感染・腫瘍融解ウイルス感染・IFNβ搭載腫瘍融解ウイルス感染の群をつくり、感染翌日の腫瘍細胞と樹状細胞を2日間GM-CSF下に共培養しました。共培養した樹状細胞ではCD80とCD86の発現は低下傾向ながら大きな差はなく、残りの表面抗原は明らかに発現レベルが低下しており、特にMHCクラスIIで顕著でしたがウイルスベクター各種群間比較では明らかな差は認めませんでした。一方樹状細胞が分泌するサイトカイン量は群間による明らかな差を認めました。TNF-αはIFNβ搭載腫瘍融解ウイルス群で最も分泌量が多く、他の群間は差を認めませんでした。IL-12もIFNβ搭載腫瘍融解ウイルス群で最も分泌量が多く、未感染・コントロールベクター感染・腫瘍融解ウイルス感染・IFNβ搭載腫瘍融解ウイルス感染と発現レベルが順番に増していました。
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